データセンターの液冷は大きく2系統
高密度AIサーバーの冷却で空冷が限界に近づく中、液体で熱を運ぶ「液冷」が広がっている。液冷は方式が一つではなく、大きく直接液冷(DLC)と液浸冷却(immersion)の2系統に分かれる。どちらも空気より熱を運ぶ能力が高いが、仕組み・適用のしやすさ・保守の作法が異なる。
直接液冷(DLC / direct-to-chip)とは
直接液冷は、CPU/GPUなど高発熱の部品にコールドプレートを密着させ、その内部に通した液体で熱を回収する方式だ。サーバー全体を液体に浸すのではなく、熱い部品だけを局所的に冷やすのが特徴で、メモリや低発熱部品は空冷を併用する構成も多い。既存のラック・サーバー構成を比較的活かしやすく、導入のハードルが低い。
商品化も進んでいる。CoolITのラック型CDU(冷却液分配ユニット)「CHx200」は、4Uの筐体で200kWの熱負荷を処理し、最大200サーバーを冷却できるとされる(温水冷却対応・N+1冗長ポンプ/電源)(CoolIT Systems)。NVIDIAのGB200 NVL72のようなラックスケールの液冷設計も、こうした直接液冷を前提にしている(NVIDIA)。
直接液冷の進化——二相ダイレクト・トゥ・チップ(2P DLC)
前節のDLCは、コールドプレート内で液体が沸騰しない「単相」が主流だ。実際、単相液冷は2026年時点で市場シェア約55%と推定され、今後5〜10年は主流を維持する見通しである。だが、AIアクセラレータのTDP(熱設計電力)は2020年から2024年で2.5倍に増え、単相では冷やしきれない領域が見え始めた。ここで注目されるのが、コールドプレート内で冷媒を沸騰(相変化)させて熱を奪う二相ダイレクト・トゥ・チップ(2P DLC/P2P)である。
OCP(Open Compute Project)は2025年2月14日にP2P(Pumped two-Phase)冷媒DLCの白書を公開し、標準化の議論を前進させた。白書が示す性能は高い。P2P冷板は最大2,200W/ソケット・約250W/cm²の除熱を示し、2kW超のプロセッサや1OUで10kW超のサーバーを実証済みとする。冷板の出口蒸気品質は70%前後を設計目標とし、CDUは400kW・180kW・100kW級の構成が示された。冷媒にはGWP293のA1不燃冷媒R-515Bなどが提示されている(キガリ改正によるHFC規制が背景にある)。
商品化も始まっている。AEWINは二相式直接液冷(2P DLC)でチップ1個あたり2kW超の除熱を実現し、SC25(2025年11月)で初公開した。
ただし二相DTCは万能ではない。コールドプレートの熱伝達率は単相を上回るものの、初期コストと相変化冷媒の管理の複雑さが障壁になる。当面は単相が主流を保ちつつ、最高発熱部で二相DTCが先行採用される——という二層構造が現実的な移行像である。
液浸冷却(immersion)とは — 単相と二相
液浸冷却は、電子機器を誘電性(電気を通さない)の液体に直接浸す方式だ。部品と液体が直接触れるため熱の移動効率が高い。液浸はさらに2つに分かれる。
- 単相(single-phase):液体が沸騰・気化せず、循環と熱交換器で熱を運ぶ。
- 二相(two-phase):液体が部品の熱で沸騰して気化し、凝縮器で液体に戻る。相変化を使うため、単相より高い熱伝達が得られるとされる。
学術研究では、液浸冷却は空冷比でエネルギー消費を約50%、占有スペースを約3分の2削減できるとの報告もある一方、保守性やIT機器の扱いにくさといった課題も指摘されている(arXiv)。高い冷却能力と引き換えに、運用・保守の作法が空冷から大きく変わる点が実装上の論点になる。
直接液冷(DLC)
高発熱部品をコールドプレートで局所冷却。既存ラックへの適用がしやすく、導入のハードルが低い。低発熱部品は空冷併用も。
液浸(単相)
誘電性液体に全体を浸す。高い冷却能力。配線・保守の作法が空冷と変わる。
液浸(二相)
相変化で更に高い熱伝達。冷媒・凝縮器の設計と故障モード管理が要点。
選定の観点
熱処理能力・既存設備の活用・保守性・エコシステム成熟度(OCP等の標準化)で総合判断する。
まとめ
DLCは「熱い部品を局所的に冷やす・既存構成を活かしやすい」、液浸は「全体を浸して高い冷却能力を得るが運用・保守が変わる」という違いに整理できる。どちらを選ぶかは、ラックの電力密度・既存設備・保守体制・標準化の成熟度で変わる。冷却方式の選択は電源・パワーデバイスの設計前提にも波及するため、詳細は関連記事で扱う。
