OCPと「Diablo」— サイドカー電源ラックの考え方

OCP(Open Compute Project)は、Google・Meta・Microsoftなどのハイパースケーラーが主導する、データセンター設備のオープンな標準化コミュニティだ。そのOCPが示す次世代電源の構想のひとつが、電力変換を計算ラックの外へ切り出す分離型(サイドカー)電源ラックである。

従来は1本のラックの中に計算用サーバーと電源を同居させ、ラック内48/54V直流で給電していた。これに対し分離型では、電源変換を専用の「サイドカー」ラックに集約し、計算ラックへは高電圧直流で送る。狙いは、計算空間から変換段を追い出して密度と効率を上げつつ、給電電圧を引き上げて大電流の問題を避けることにある。

48V直流から±400/800V直流へ

この構想で鍵になるのが給電電圧の引き上げだ。分離型電源ラックでは、ラック内48V直流から±400Vまたは800V直流(HVDC)へ給電を上げ、100kW〜1MWのITラックに対応できるとされる。電圧を上げることで同じ電力での電流を下げ、導体損失や発熱を抑えられる。

NVIDIAもこの方向に沿って800Vエコシステムを示しており(NVIDIA Technical Blog)、特定ベンダーの独自設計ではなく、ハイパースケーラー主導の標準として400/800V化が進んでいる点が重要だ。

分離型(サイドカー)電源ラックの要点
01

電源を計算ラックから分離

電力変換を専用サイドカーに集約し、計算空間の密度と保守性を上げる。

02

高電圧直流で給電

ラック内48V直流から±400/800V直流へ。大電流を避け、導体損失・発熱を抑える。

03

100kW〜1MWに対応

AIラックの100kW超〜1MW級の電力需要に給電方式として対応する狙い。

04

ハイパースケーラー主導の標準

特定ベンダー依存でなく、OCPを通じた業界横断の移行軸として進む。

NVIDIAの800Vエコシステムとの関係

分離型電源ラックの構想は、NVIDIAが進める800V DCアーキテクチャと方向性が一致している。NVIDIAはモノポーラ800Vの660kWリファレンス設計を開発し、空冷サンプルと量産を2026年半ば、液冷派生を2026年後半に計画している。つまり「標準(OCP)」と「実装(NVIDIAや電源・半導体ベンダー)」が同じ800V/分離型の方向に収束しつつある。

設計・調達の観点では、分離型・800V化を前提にすると、施設側の配電・保護や、800V対応の電源・遮断機器の調達リードタイムが新たな計画変数になる。給電アーキテクチャの選択は、計算ラック単体ではなく施設全体の設計に波及する。詳細なアーキテクチャ移行は関連記事で扱う。

参照ファクトカード