8インチ(200mm)SiCウェハへの移行は、製造コスト低減の鍵として各社が準備を進めている。三菱電機とCoherentの共同開発は、新工場棟を見据えた材料確保の動きとして読める。
結論
三菱電機はCoherentと8インチSiC基板の共同開発パートナーシップを強化した。熊本県泗水地区の新工場棟での量産を見据えたもので、高品質な200mmSiC基板の安定供給に向けた材料側との協力体制を構築している。
何が起きたか
三菱電機はCoherentと8インチSiC基板の開発協業を発表した。新工場棟での使用を前提にした高品質基板を確保する目的で、両社のR&Dリソースを組み合わせる内容だ。
Coherentは旧II-VI Incorporated系のSiC基板・エピウェハメーカーで、6インチ・8インチのSiCウェハ製造能力を持つ。三菱電機が基板品質の仕様策定から関与する共同開発の形は、単純な購買契約より踏み込んだ関係だ。
三菱電機の熊本新工場は2025年9月に竣工し、2026年の稼働開始・2027年以降の量産開始を目指している。8インチ移行を見据えた設備として位置づけられる。
業界背景
現在のSiC量産主力は6インチ(150mm)ウェハだが、8インチへの移行はウェハ1枚あたりのチップ取れ数を約78%増加させる。製造コストの大幅な削減につながるため、各社が移行タイミングを競っている。
InfineonはSK Siltronとの契約で200mm移行支援を盛り込み、ルネサスはWolfspeedとの10年契約に次世代ウェハ対応を含めている。デバイスメーカーが材料サプライヤーとの関係を長期化・深化させているのは、8インチ移行期の材料品質と供給安定性を先に押さえるためだ。
チップコスト
6インチ比でウェハあたりの有効チップ数が約78%増加し、製造コスト低減の最大の要因になる。移行の早さが価格競争力の差につながる。
基板品質の要求水準
大口径ウェハはマイクロパイプ密度や転位密度の管理がより難しい。材料メーカーとの共同開発が品質基準を決める場になっている。
設備投資の時機
6インチラインへの新規投資は回収期間が短くなるリスクがある。新工場は8インチを前提にすることが経営判断として自然になりつつある。
見ておきたいこと
三菱電機・Coherentの共同開発が具体的な量産スペックにどうつながるかは、熊本新工場の立ち上げスケジュールとセットで見るべきだ。共同開発の段階から品質基準を決めることは、量産立ち上げ後の歩留まり安定化に直結するため、競合比で有利な位置に立てる可能性がある。
SiCデバイスを採用するシステムメーカーにとっては、6インチ現行品と8インチ移行品の供給切り替えのタイミングと、その際のデバイス仕様変更の有無を事前に確認しておくことが、設計資産の継続性を守るうえで重要になる。
