EV向けインバータにおけるSiC採用は、欧州系デバイスメーカーとEVサプライヤーの間で量産契約として結実しつつある。STマイクロとAmpereの協業は、SiCがOEM向け量産調達の文脈でどう動いているかを読む事例になる。

結論

STマイクロエレクトロニクスはAmpereの電動パワートレイン向けインバータ用powerboxにSiCパワーモジュールを供給する契約を締結した。供給は2026年に開始される。これは欧州EV向けパワートレインでのSiC採用が量産フェーズに入っていることを示す具体例だ。

何が起きたか

STマイクロとAmpereは2024年12月、電動パワートレイン向けインバータに使うpowerbox(パワーモジュールユニット)の供給協業を発表した。

この契約はAmpereの電動パワートレインシステムにおけるSiCインバータの量産対応を想定している。2026年からの供給開始は、開発フェーズではなくすでに量産調達の段階に入っていることを意味する。

Ampereはルノーグループが設立したEVとソフトウェアに特化するブランドで、欧州EV市場向けの車両を複数展開してきた。2026年1月にルノーグループへの再統合が発表されており、ブランドの位置づけは変化しているが、電動パワートレインの開発・調達は継続している。パワートレインのインバータ効率はEVの航続距離と直結するため、SiCデバイスの採用はコスト増を上回るシステム価値として扱われている。

業界背景

EV向けインバータでのSiC採用は、2023〜2024年にかけてティア1サプライヤーとデバイスメーカーの間で量産契約として積み上がってきた。STマイクロはSiCの主要サプライヤーとして欧州を中心に供給先を拡大している。

SiCパワーモジュールはディスクリートSiCデバイスと異なり、モジュール単位で組み込めるため実装効率が高い。インバータメーカーやティア1にとっては設計工数の圧縮にもつながることから、モジュール形式での調達ニーズが増えている。

EV向けSiC採用の3つの現状
01

量産契約の積み上がり

STやInfineonを中心に、EV向けSiCパワーモジュールの量産契約が2025〜2026年供給を対象として相次いで締結されている。

02

モジュール化の進行

ディスクリートからモジュールへの移行が進み、インバータの実装設計とデバイス調達の分業が変わりつつある。

03

価格圧力と供給調整

EVメーカー側のコスト要求が強まる中、SiCサプライヤー各社は量産規模の拡大でコスト吸収を図っている。

見ておきたいこと

STマイクロのSiC事業は自社ウェハ製造(Norstelの内製化)と外部調達を組み合わせた構造で、材料の安定供給と価格管理の両面で独自性がある。2026年の量産開始に向けて、ウェハ歩留まりとモジュール組み立て能力がどの水準で動くかが競争力の焦点になる。

採用側からは、2026年以降のモデル向け調達ではSiCモジュールを前提にした設計プロセスに移行しているかどうかが、デバイス選定の議論の入り口になる。