米デラウェア州議会下院は2026年6月17日、データセンター等の大規模施設による電力コスト転嫁から一般消費者を保護する2法案を可決した。HB233(コスト負担・料金体系)とHB445(電源自給義務)の組み合わせで、系統接続の条件を法律レベルで定める内容になっている。

立法の背景にある数字が、この州の事情を端的に示している。デラウェア州の電力顧客全体の年間消費量は約1,130万MWh。これに対し、提案されているデータセンターのうち1棟だけで年間870万MWhを消費する見込みだ。州全体の消費量の8割近くを単一施設が使う計算になる。

Loading chart

小規模州に大規模データセンターが立地する場合、系統への影響が桁違いに大きくなる。この構造が、他州より踏み込んだ規制につながった。

HB233:コスト転嫁の遮断と別建て料金

HB233は「大規模エネルギー使用施設(large energy-use facility)」を対象に、その施設のために必要となる新規の送配電インフラ費用、および施設が生じさせる容量市場コストの増分を、施設側が全額負担することを義務付ける。これらの費用を住宅顧客・中小企業・その他の一般消費者へ転嫁することはできない。

実装方法として、公共サービス委員会(PSC)の規制下にある電力事業者に対し、大規模エネルギー使用施設向けの別建て料金体系の設定を求めている。規制対象事業者は法律施行後180日以内に料金申請書を提出する義務を負う。

施設側は既存顧客を将来のコスト転嫁から保護するための電力サービス協定・送電サービス協定を締結する必要があり、これらの協定が承認され新料金体系が整備されるまでは系統接続が認められない。PSCは料金申請の審査にあたり、一般顧客のコスト増につながらないか、系統の信頼性を脅かさないか、州の再生可能エネルギー目標や排出削減目標を損なわないかといった観点を含む5項目の判断基準を適用する。

HB233自体は2025年6月30日に提出され、2026年5月21日に代替法案(HS1)へ差し替えられたうえで可決された経緯を持つ。

HB445:10年で消費電力100%の自給

HB445はさらに踏み込み、大規模エネルギー使用施設に対して自らの運転に必要な電力を「生産または調達」することを義務付ける。運転開始から10年以内に、年間電力消費量の100%に相当する新規電源を確保しなければならない。

デラウェア州2法案の要点
01

HB233:コスト負担

新規送配電インフラ費用と容量市場コスト増分を施設側が全額負担。一般消費者への転嫁を禁止。

02

HB233:料金・接続

PSC規制事業者は施行後180日以内に別建て料金を申請。料金体系と各種協定の承認完了まで系統接続不可。

03

HB445:電源自給

運転開始から10年以内に年間消費電力100%相当の新規電源を生産または調達。段階的な移行期間を設定。

04

HB445:移行計画

当初は自給できない施設も、どう段階的に発電量を増やすかの計画を提出する義務を負う。

当初から必要量を自給できない施設については、どのように発電量を段階的に増やしていくかを示す計画の提出が求められる。10年間のランプアップ期間を設けることで、いきなり全量自給を求める設計にはなっていない。HB445は2026年5月21日に導入され7月1日に可決された。

「大規模エネルギー使用施設」という定義の射程

この2法案で注目すべきは、規制対象を「データセンター」と名指しせず「大規模エネルギー使用施設」という電力消費量ベースの定義で捉えている点だ。データセンターが主たる想定対象であることは立法趣旨から明らかだが、定義自体は消費規模で線を引いている。

同種の規制を検討する他の州や国にとって、この定義の書き方は参照されうる。AIデータセンターに限らず、大規模な電力を消費する施設全般——先端製造拠点なども含めて——を同じ枠組みで扱う設計になるためだ。

事業計画の観点では、系統接続の前提条件が「送電網に空きがあるか」から「規制要件を満たす協定と料金体系が整っているか」へ移動したことになる。立地選定の段階で、州ごとの規制枠組みの有無と内容が接続可能時期を左右する要素として加わる。10年で100%自給という要件は、オンサイト発電やPPAの確保をプロジェクト初期から織り込む必要があることを意味する。

参照ファクトカード