「組み立てる」段階に入ったインド
半導体の話でインドといえば、これまでは設計拠点やソフトウェア人材の文脈で語られることが多かった。その構図が変わり始めている。CG Semiが2026年7月4日、グジャラート州サナンドのG1 OSAT(外部委託半導体組立・テスト)施設で商業生産を開始した。設計ではなく、チップを組み立て・検査して出荷する後工程の量産が、インド国内で立ち上がったことになる。
調達側にとって意味があるのは、供給網の「地図」に新しい点が加わったことだ。後工程は前工程(ウエハ製造)ほど注目されないが、供給が詰まればチップは出荷できない。その能力がどこにあるかは、供給継続性を左右する。
27カ月で着工から量産へ
着工から商業生産までは27カ月だった。半導体の組立・検査ラインとしては速いペースで、設備設置・プロセス安定化・人材育成・顧客認定・品質準備といった段階を通してこの期間に収めている。式典にはモディ首相が出席し、政府が国家プロジェクトとして位置づけていることがうかがえる。
インド政府の説明では、サナンドのCG Semi施設はインドにとって3番目の主要半導体施設にあたる。単発の投資案件ではなく、インド半導体ミッション(ISM)の下で短期間に3拠点が商業生産段階に入ったという流れの一部だ。政策が「設計から製造・パッケージングまで一貫した半導体エコシステムを国内に構築する」という国家目標を掲げ、その封止・テスト(OSAT)の層が具体的に稼働に移ったという位置づけになる。
規模と座組——3社合弁と₹7,600億投資
数字で見ると規模は小さくない。G1施設の最大生産能力は年間3億個、CG SemiはG1・G2の2施設に5年間で₹7,600億超(約8億7,000万ドル)を投資する計画だ。G1がまず立ち上がり、G2が続く二段構えになっている。
座組も海外プレイヤーを取り込んでいる。CG SemiはCG Power and Industrial Solutions(ムルガッパ・グループ)、ルネサス エレクトロニクス、Stars Microelectronics(タイ)の3社合弁だ。デバイスメーカー(ルネサス)と既存OSAT/EMSの実務(Stars)を組み合わせ、後工程の立ち上げに必要な技術と運用ノウハウを外部から取り込む形になっている。国産化の掛け声だけで走るのではなく、確立した相手と組んで量産品質に早く到達する設計だ。
なぜ「後工程(OSAT)」から埋めるのか
インドがまず後工程から入るのは、供給網の構造から見て理にかなっている。前工程のウエハ量産は装置・材料・歩留まりの蓄積に時間とコストがかかる。一方でOSATは、需要が読みやすく、投資回収の道筋を描きやすい。AIデータセンターや電動化でパッケージングがボトルネック化しつつあるなか、封止・検査の能力を先に確保することは、供給網の実務的な穴を埋める動きといえる。
同施設で組み立て・検査されるチップは、自動車・EV・民生電子・産業機器など多分野に供給される想定で、用途を特定分野に絞っていない。汎用性の高い後工程能力をまず立ち上げ、そこから積み上げる考え方だ。
調達から見たインドOSATの読み方
供給網を評価する立場からは、インドのOSAT稼働は「もう一つの選択肢」が現実味を帯びたと読める。これまで後工程は東アジア・東南アジアに偏在してきた。そこにインドという点が加わることは、地政学リスクの分散を考える調達部門にとって検討材料になる。
もっとも、稼働開始と成熟は別だ。歩留まり・顧客認定・安定供給の実績はこれから積み上がる段階にある。人材面ではジャールカンド、チャッティースガル、マディヤ・プラデーシュ、ビハール、ジャンムー・カシミール、ケーララなど全国各地から集まった若手技術者を雇用しており、現場の習熟がこれから進む。裏を返せば、供給先候補として本格的に評価できるかは、量産の連続稼働と品質データが揃ってからになる。
何が起きたか
CG SemiがサナンドG1 OSAT施設で商業生産を開始(2026年7月4日)。着工から27カ月で量産到達、モディ首相が式典出席。
規模と座組
G1年産最大3億個、G1・G2に5年で₹7,600億超投資。CG Power×ルネサス×Stars Microelectronicsの3社合弁で技術と運用を外部補完。
なぜOSATから
前工程より投資回収が読みやすく、パッケージングのボトルネック化に対応。自動車・EV・産業など多分野へ汎用能力を先行確保。
調達の見方
後工程の供給地に新しい点。地政学分散の選択肢になり得るが、歩留まり・認定・連続稼働の実績はこれから。
事業への影響と確認ポイント
調達・投資の観点で押さえておきたいのは、①インドOSATが自社の調達品目(自動車・産業・EV向けなど)と重なるか②G2を含む増設が計画通り進み、年産能力がどこまで実効化するか③顧客認定・品質データが揃い、東アジア拠点の代替・補完として評価できる水準に達するか——である。インドの後工程稼働は、単発の開所ニュースではなく、供給網の地図に新しい選択肢が加わる長期の変化として追う価値がある。設計国から「組み立てる国」への一歩が、どこまで実供給につながるかがこれからの焦点だ。