Wolfspeedは2026年6月9日、第5世代(Gen 5)SiC(炭化ケイ素)MOSFET技術を発表した。現行で市販される競合の1200Vソリューションと比較して特定オン抵抗(RSP)を最大27%低減し、業界最低水準を達成したとしている。Chapter 11による財務再建が進むなかでの新世代投入であり、技術ロードマップ上の競争力を維持する意図がうかがえる。

最大27%
競合1200V品比でのRSP(比抵抗)低減。同一の5×5mmフットプリントで電流密度を高める

比抵抗27%低減が調達側に意味すること

Gen 5の核となる訴求は、競合1200V品比でRSP(特定オン抵抗=チップ面積あたりの導通抵抗)を最大27%下げた点にある。RSPの低減は、同じオン抵抗をより小さなチップ面積で実現できることを意味し、ダイコストの低下とモジュールの小型化につながる。Wolfspeedは175°Cの高温動作時でも5×5mmのフットプリントで最大電流密度を実現するとしており、トラクションインバーターの小型化やEVバッテリー容量の適正設計に寄与する。EV向けパワーモジュール調達では、Gen 5が競合比較の新たなベースラインとなる可能性がある。

1200Vと750Vの二電圧クラス展開

Gen 5技術は1200Vと750Vの両電圧クラスをカバーし、車載トラクションインバーターと産業用電源の双方に対応する。750Vクラスは、産業用インバーターや高出力EV充電インフラなど車載以外の用途を取り込む狙いがあり、メカニカルリレーをソリッドステート回路ブレーカーへ置き換える新規用途への適用も想定されている。電圧帯ごとにラインアップを整備する動きはメーカー各社で加速しており、設計者は電圧帯と損失特性の両軸で素子を選定する局面が広がっている。

見るポイント
01

発表日

2026年6月9日

02

世代

Gen 5(第5世代)

03

RSP低減

競合1200V比 最大27%

04

電圧クラス

1200V / 750V

05

フットプリント

5×5mm(175°C動作)

06

製造基盤

200mm 量産プラットフォーム

07

世代更新

Gen 4から2年未満

200mm量産対応という供給面の差別化

Gen 5は、Wolfspeedの認定済み・量産立ち上げ対応の200mm(8インチ)製造プラットフォーム上で量産対応済みとされる。サンプルから量産への移行は調達側にとって最大のリスク要因の一つだが、200mmラインへの移行が完了していれば、量産出荷までのパスは相対的に低リスクとなる。競合の一部が150mm(6インチ)中心のラインアップに留まるなか、実供給力での差別化ポイントになり得る。

なお、EV充電インフラ向けに「新たな効率基準を設定する」との位置づけは同社による主張であり、スイッチング性能向上による設置コスト削減効果は実機条件での検証が前提となる。

設計・調達担当者へのポイント

Wolfspeed CBOのCengiz Balkas氏は、Gen 4でのスイッチングブレークスルーから2年未満でGen 5を投入したと述べている。2年を切る世代更新サイクルは、OEM・Tier 1にとってデザインインのタイミング管理と長期調達契約の更改サイクルの見直しを迫る。一方でWolfspeedは財務再建の途上にあり、長期供給の確実性は供給リスクの評価とあわせて判断する必要がある。性能数値は公称値であり、実効果はゲートドライブ設計・スイッチング周波数・温度条件に依存するため、評価ボードでのダブルパルステストによる実機確認を推奨する。

参照ファクトカード