2026年1月、EUのCBAM(炭素国境調整措置)が移行期間を終えて本格施行に入った。その影響が初めて定量的に可視化された数字がある。
インドのEU向け非合金アルミニウム輸出量が、2025年1月時点の18,654トン(累計)から2026年1月時点で10,875トンへと激減した。アルミニウム産業専門メディアAlCircleの報道によれば、1年間で41.7%の落ち込みだ。これはCBAM施行によって炭素コストが貿易コストとして現実に組み込まれ、競争力の方程式が変わったことを示す最初の定量的な証拠といえる。
なぜアルミニウムが最初に「傷跡」を見せたか
アルミニウムは製造工程での電力消費が多く、炭素集約度が高い素材だ。再生可能エネルギー比率が相対的に低いインドの製造業は、CBAMが課す炭素コストの影響を直撃しやすい。
輸出量の激減
EU向け非合金アルミ輸出:18,654トン(2025年1月)→ 10,875トン(2026年1月)。1年で41.7%減(AlCircle)。
前哨戦(FY25)
CBAM完全施行前のFY25の時点で、インドの鉄鋼・アルミのEU輸出はすでに24.4%減少(GTRI調査)。
コスト上昇の試算
CBAMによる追加コストはインドのアルミ輸出コストを7〜50%引き上げる可能性(業界試算)。
競争力回復の条件
EU市場での競争力維持には輸出価格を15〜22%引き下げる必要があるとされる(同)。
業界の試算では、CBAMによる追加コストでインドのアルミ輸出コストが7〜50%上昇し、EU市場での競争力を維持するには輸出価格を15〜22%引き下げる必要があるとされる。その価格圧力が輸出量の落ち込みに直結した構図だ。
なお、この激減はCBAM完全施行前からも予兆があった。FY25(2024年度)のうちに、インドの鉄鋼・アルミニウムのEU輸出はすでに24.4%減少していた(グローバル貿易研究イニシアティブ〈GTRI〉の調査をAlCircleが報告)。CBAM移行報告期間の段階で、EU側バイヤーが調達先を切り替える動きが始まっていたことを示している。
インドの反転策
インド政府は国内炭素クレジット取引制度(CCTS)の整備を進めており、アルミ製造の炭素集約度を引き下げることでCBAM対応の競争力回復を目指している。
経営・調達・設計等への示唆
インドのアルミ輸出41.7%減は、CBAM対象品を扱う企業への直接的なシグナルだ。日本の鉄鋼・化学・アルミメーカーも同じ構造的課題に向き合う。EU向け輸出コストの試算、代替調達先の検討、サプライヤーの炭素強度評価——これらは「近い将来の課題」から「今の課題」に変わった。調達・事業企画の段階でCBAMの影響を定量的に組み込んでおく必要がある。
