2026年は、日本のサステナビリティ開示に大きな転換が起きた年として記録されることになる。
2月20日、内閣府令の改正により、SSBJ(サステナビリティ基準審議会)が策定した開示基準が有価証券報告書への記載において正式に義務化の根拠となった。最初の義務対象会計年度は2027年3月期——2026年4月1日以降に始まる事業年度だ。初年度は時価総額3兆円以上の大企業が対象だが、それ以外の上場企業にも任意適用が開かれており、早期準備の動きが広がっている。
SSBJの骨格はISSBのS2基準(気候関連情報開示)をベースとしており、気候リスク・機会の特定、シナリオ分析、Scope 1・2・3排出量の開示が求められる。なかでもScope 3——サプライチェーン全体の間接排出量——の算定が、準備において最も負荷の大きい作業として認識されている。
同じタイミングで動き出したCBAM
一方、EUでは2026年1月1日をもってCBAM(炭素国境調整措置)が移行期間を終え、実際の炭素費用を伴う本格施行に入った。対象品目は鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料・電力・水素の6分野。EU向けに輸出する場合、製品製造時の炭素排出量に応じたCBAM証書の購入が義務となる。証書価格はEU排出権(EUA)価格に連動するため、日本の鉄鋼・化学メーカーのEU輸出コストに直接影響する。
SSBJ(2026年4月〜)
2月20日の内閣府令改正で有価証券報告書への記載が義務化。初年度は時価総額3兆円以上の大企業。Scope 1/2/3排出量・シナリオ分析が開示対象。
CBAM(2026年1月〜)
EU向け輸出品の製造時炭素排出量に応じたCBAM証書購入が義務化。鉄鋼・アルミ・セメント・肥料・電力・水素の6品目が対象。
共通の要求
両規制ともサプライチェーン排出量の把握が前提。Scope 3算定データはCBAM申告データとほぼ重なる。
最初のコスト増が現実に
インドのアルミニウム対EU輸出はCBAM施行後に41.7%減少。日系製造業も同様の構造的リスクにさらされている。
2つの規制が重なることの意味
SSBJとCBAMが同じ2026年に実質的に動き出した影響は、企業内の複数部門に同時に波及する。IR・開示部門はSSBJへの対応(Scope 3算定・シナリオ分析)を進め、輸出・調達部門はCBAMが課すコスト構造の変化に向き合う。
経営・調達・設計等への示唆
2026年度は、SSBJとCBAM対応のデータ整備・体制構築が本格化する「最初の年」にあたる。両規制を別々のプロジェクトとして動かしている企業は、サプライチェーン排出量データの二重管理というコスト非効率が生じる。経営企画・IR・調達・設計の各部門が共通のデータ基盤を持てるかどうかが、今後3年間の対応コストに大きく影響する。
