ニュージーランドの外部報告基準設定機関(XRB)が策定した気候関連開示基準「Aotearoa New Zealand Climate Standards(NZ CS)」が、大規模企業・金融機関に対して義務的に適用されている。根拠法はFinancial Markets Conduct Act 2013のPart 7Aで、NZは気候開示の法定義務化において世界をリードする先進事例として位置づけられる。
義務対象の閾値と範囲
義務対象は二層に分かれる。第一層は時価総額6,000万ニュージーランドドル超の大規模上場会社。第二層は資産10億ニュージーランドドル超の登録銀行・認可保険会社・信用組合・住宅金融組合・投資スキーム運用者だ。グローバルに事業展開する金融機関や持株会社にとっては、NZ子会社がこの閾値を超えるケースで開示義務が生じるため、グループ連結での閾値管理が必要になる。
NZ CS 1:3シナリオ分析が最低要件
コアとなるNZ CS 1は物理的リスク・移行リスク・機会の開示を義務付けており、特徴的なのはシナリオ分析の最低要件として具体的な温度帯を指定している点だ。少なくとも「1.5℃シナリオ」「3℃以上のシナリオ」「第三の気候関連シナリオ」の3本を含めることが要求される。各シナリオには物理的リスク・移行リスク・機会の要素を統合する必要があり、定性的な記述だけでは要件を満たさない。
欧州CSRDがシナリオの温度帯指定を一部企業判断に委ねているのと比較すると、NZは複数温度帯にわたる事業耐性を定量的に開示させる方向性を明確に打ち出しており、ISSBのIFRS S2と概念的に整合しつつも要求水準が具体的だ。
グローバルサプライチェーンへの示唆
NZ開示制度はIFRS S2との整合を図っており、将来的なグローバル開示標準の一翼を担うポジションにある。製造業・調達部門にとっては、NZ上場企業や金融機関から3シナリオに基づく気候リスクデータを入手できる機会が増える一方、自社もサプライヤーとして同水準のデータ開示を求められるリスクを見越した対応が必要だ。NZ制度の構造を把握しておくことは、ISSBに基づく日本のSSBJ基準対応の参照事例としても有益である。
