Flex(NASDAQ: FLEX)は2026年9月3日、EPC Power Corp.を44億ドルで買収する確定契約を締結したと発表した。規制当局の承認など慣例的な完了条件を前提に、2026年第4四半期の完了を見込む。完了後、EPC PowerはFlexの「Cloud and Power Infrastructure」部門に組み込まれる。

買収額の規模もさることながら、注目すべきは何を買ったかだ。

買収対象は800V DCアーキテクチャそのもの

EPC Powerが持つのは、デジタル整流器および固体変圧器(SST)を含む次世代800ボルトデータセンター電力アーキテクチャだ。高密度AIインフラ向けの電力供給を担う領域で、Flexはこの統合により「グリッドからチップまで(grid-to-chip)」の一貫した電力ポートフォリオを構築できるとしている。

800V DCへの移行は、AIラックの電力密度が上がるにつれて配電損失とケーブル重量が制約になることへの業界的な回答として進んでいる。その移行を担うハードウェア——整流器・変圧器——を誰が供給するかという問題に、EMS側から垂直統合で答えを出したのが今回の取引だ。

米国内製造を4年で約10倍に

EPC Powerはカリフォルニア州ポウェイを拠点とする北米の電力変換ソリューションメーカーで、データセンター・ユーティリティスケール蓄電・マイクログリッドを主要市場とする。同社CEOのJim Fusaro氏によると、過去4年間で米国内の製造拠点をほぼ10倍に拡大した。Goldman Sachs AlternativesおよびCleanhill Partnersとのパートナーシップのもとで成長してきた企業だ。

EPC Powerの事業構成と買収の位置づけ
01

技術資産

デジタル整流器・固体変圧器を含む800V DCデータセンター電力アーキテクチャ。ソフトウェア定義型の高性能電力変換を特徴とする。

02

対象市場

データセンター、ユーティリティスケール蓄電、マイクログリッド。老朽化する米国電力グリッドの課題への対応も訴求点。

03

製造基盤

カリフォルニア州ポウェイ拠点。過去4年で米国内製造拠点を約10倍に拡大。

04

統合後の位置

Flexの「Cloud and Power Infrastructure」部門に編入。grid-to-chipの一貫ポートフォリオ構築が狙い。

米国内製造基盤を持つ点は、系統機器の調達に規制圧力がかかりつつある現在の環境で意味を持つ。2026年8月の大統領令14420号は外国製バルク電力系統機器を規制対象としており、対象は送電レベルに限定されるものの、電力インフラ全般で国内供給網の価値が高まる方向に働く。

調達・設計側の見方

この取引が示すのは、AIデータセンター向け電力の競争軸が個別デバイスから階層の押さえ方へ移っているという構図だ。パワー半導体側ではInfineonがC2iを買収してチップ直下の垂直給電技術を取り込み、EMS側ではFlexがEPC Powerを買収して受電・変換の段を取り込んだ。上流と下流の双方から、電力供給の各段を一社で押さえにいく動きが同時に起きている。

調達の観点では、選択肢の集約が進む可能性を織り込んでおく必要がある。これまで独立系サプライヤーから調達していた整流器・変圧器が大手の傘下に入れば、供給条件や製品ロードマップの決定要因が変わる。一方で、grid-to-chipを一社で提供できる相手が現れることは、統合の手間を減らせる面もある。どちらに振れるかは自社の設計方針次第で、分離調達を続けるか統合ポートフォリオに乗るかの判断が近づいている。

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