目次
01 「規格」から「導入計画」へ 02 Vertiv — 2026年後半に製品投入、5ヶ月でエンジニアリング完了 03 Foxconn — 台湾・高雄のK-1データセンターが先行実装拠点 04 Schneider Electric — Google・Metaを含むハイパースケーラー対応 05 サプライチェーンの広がりと導入効果 06 参照ファクトカード 「規格」から「導入計画」へ NVIDIAが主導する800VDC(800V直流)電力アーキテクチャは、Computex 2025での発表から1年強で、規格の提示から具体的な導入計画のフェーズへ進んだ。ラック電力が200kWを超えると、従来の400V三相ACや48/54V直流では銅バスバーの電流容量が物理的限界に達する。NVIDIAはこの制約に対し、1MW超のITラックを見据えて2027年から800VDCへの業界移行を主導すると明示している。
問題は「いつ、誰が実際に導入するか」だ。電源ベンダーとEMS(電子機器受託製造)大手の一次情報を突き合わせると、導入計画にはすでに具体的な日付と拠点が入っている。
Vertiv — 2026年後半に製品投入、5ヶ月でエンジニアリング完了 VertivはNVIDIAの800VDCロードマップとの整合を2025年5月に発表し、2026年後半に800VDC電源ポートフォリオを投入する計画を示している。ポートフォリオは集中整流器・DCバスウェイ・ラック級DC-DCコンバーター・DCバックアップシステムの4カテゴリで構成される。
注目すべきはスピードだ。Vertivは2025年5月の提携発表からわずか5ヶ月後の同年10月、NVIDIAとの協業で800VDCアーキテクチャの設計成熟度(エンジニアリングレディネス)に到達したと発表した。この製品群は、2027年に展開されるNVIDIA Rubin Ultraプラットフォーム(Kyberラック)の立ち上がりに合わせてタイミングが設計されている。
800VDC導入計画の主要マイルストーン 01
2025年5月 VertivがNVIDIA 800VDCロードマップとの戦略的整合を発表。
02
2025年10月 Vertivが設計成熟度に到達。Schneider Electricも800VDCへのコミットメントを表明。Foxconn×NVIDIAがOCP Global Summitで実装を発表。
03
2026年前半 Foxconn傘下・台湾高雄のK-1 AIデータセンターで800VDCの先行実装が進む。
04
2026年後半 Vertivが800VDC電源ポートフォリオを投入。
05
2027年 NVIDIA Rubin Ultra搭載Kyberラック(576基GPU/ラック)が出荷開始。
Foxconn — 台湾・高雄のK-1データセンターが先行実装拠点 EMS世界最大手のFoxconn(Hon Hai Technology Group)は2025年10月14日、OCP Global Summit 2025でNVIDIAとの協業により800VDCアーキテクチャをAIファクトリーへ実装すると発表した。この協業で最初の実装先に指定されたのが、Foxconn傘下・台湾高雄の「K-1」AIデータセンタープロジェクトである。同サイトはAIサーバー・データセンター・再生可能エネルギー統合能力を実証する拠点と位置づけられている。
Foxconn子会社のIngrasys TechnologyはOCP Global Summit 2025で、NVIDIA GB300 NVL72プラットフォームにIn-row CDU(冷却分配ユニット)を統合したソリューションを展示。GB300 NVL72は1ラックに72基のGPUを搭載し142kWを消費するが、これは800VDC移行前の"最後の過渡世代"の電力密度を示す実例でもある。
さらに2026年6月15日には、Schneider ElectricとFoxconnが次世代AIデータセンター向けの戦略的協業を追加発表した。Foxconnのコンピュートプラットフォーム・AIラック統合・グローバル製造能力と、Schneiderの電力・冷却・エネルギー管理技術を組み合わせ、地域横断で「速度・効率・予測可能性」を訴求する統合済みパッケージを目指すという。Foxconn会長・劉揚偉(Young Liu)氏は「AIインフラの設計・構築・提供モデルの刷新が業界に求められている」と述べている。
Schneider Electric — Google・Metaを含むハイパースケーラー対応 Schneider Electricは2025年10月13日、NVIDIAの次世代GPU向けに800VDCパワーインフラへの対応強化を発表した。開発中の800VDCサイドカーは、Google・Metaを含む主要ハイパースケーラーをサポートする設計で、稼働中の交換作業を可能にする「Live Swap」機能も搭載する。同社データセンター部門CTOのJim Simonelli氏は「コンピューティング密度の増大に伴い、800VDCへの移行は自然な進化」と位置づけている。
サプライチェーンの広がりと導入効果 NVIDIAの800VDCエコシステムには、Analog Devices・Infineon ・Innoscience・MPS・Navitas ・OnSemi・Renesas ・ROHM ・STMicroelectronics ・Texas Instrumentsなど半導体大手が参画。ラックサーバーの新世代Vera Rubin NVL72向けには、50社を超えるMGX(NVIDIAのモジュラーGPU参照設計)パートナーが対応を進めている。
導入効果としてNVIDIAが公表する数値は、エンドツーエンド効率の最大5%改善、メンテナンスコストの最大70%削減、TCO(総所有コスト)の最大30%削減。電力変換段数の削減と導体使用量の低減が主な要因だ。
2025年5月
Vertiv、NVIDIA 800VDCロードマップとの戦略的整合を発表
2025年10月
Vertivが設計成熟度に到達/Schneider Electricが800VDCコミットメント表明/Foxconn×NVIDIAがOCP Global Summitで実装を発表
2026年前半
Foxconn傘下・台湾高雄のK-1 AIデータセンターで先行実装が進行
2026年6月
Schneider ElectricとFoxconnが次世代AIデータセンター向け戦略協業を追加発表
2026年後半
Vertivが800VDC電源ポートフォリオを製品投入
2027年
NVIDIA Rubin Ultra搭載Kyberラック(576基GPU/ラック)が出荷開始
調達・電源設計・投資判断の観点では、800VDCはもはや「将来構想」ではなく、Vertiv・Schneider Electricという主要電源ベンダー2社が2026年中に製品を市場投入し、Foxconnが実拠点で先行実装を進める段階にある。2027年のKyberラック出荷開始に向けて、施設側の配電設計・機器調達のリードタイムを今から織り込む必要がある局面だ。
参照ファクトカード
VertivはNVIDIA 800 VDCロードマップに合わせ、2026年後半に800 VDC電源ポートフォリオを投入予定
Vertiv(NYSE: VRT)は2025年5月19日、NVIDIAが発表した次世代AIデータセンター向け800 VDCアーキテクチャロードマップへの戦略的整合を表明した。同社の800 VDC電源ポートフォリオは2026年後半にリリース予定で、NVIDIA KyberおよびNVIDIA Rubin Ultraプラットフォームの展開に先行する計画である。Vertivは「NVIDIAより1世代先を走る」方針でインフラを提供するとしている。
NVIDIAは2027年から800 VDCデータセンター電力インフラへの移行を主導する
NVIDIAは1MW以上のITラックを支えるため、2027年を起点に800 VDCアーキテクチャへの業界移行を牽引する。従来の54 VDC分配方式はKWスケックのラック向けに設計されており、MWスケールのAIファクトリー要件を満たせない。Eaton・Schneider Electric・Vertivなどのデータセンター電力システム大手や、Delta・Flex Power・LiteOnなどのコンポーネントメーカーと協業して推進する。
VertivがNVIDIAと協業し800 VDC電力アーキテクチャの設計成熟度を達成(2025年10月)
Vertiv(NYSE: VRT)は2025年10月13日、NVIDIAとの協業においてAIファクトリー向け800 VDC電力アーキテクチャの設計成熟度(エンジニアリングレディネス)に到達したと発表した。2025年5月に発表した戦略的提携を基盤とし、コンセプト段階から実装設計段階へ移行した。製品ポートフォリオは2026年下半期にリリース予定。
Vertivの800 VDC製品はNVIDIA Rubin Ultraプラットフォームの2027年展開を支援
Vertivが2026年下半期に投入予定の800 VDC電力ポートフォリオは、2027年に展開されるNVIDIA Rubin Ultraプラットフォームのサポートに合わせてタイミングが設計されている。これによりAIファクトリーの次世代GPU基盤と電力インフラが同期して立ち上がる計画となっている。
Vertivは2025年5月の提携発表から5ヶ月でエンジニアリングレディネスに到達
Vertivは2025年5月にNVIDIAとの戦略的提携を公表し、同年10月13日(約5ヶ月後)に800 VDCアーキテクチャのエンジニアリングレディネス達成を発表した。このスピードは、AIインフラの電力需要への業界対応が急加速していることを示している。コンポーネント仕様の確定とプラットフォーム設計が完了した段階にある。
Foxconnが台湾高雄に40MWの800VDCデータセンター「Kaohsiung-1」を建設中
FoxconnはOCP Global Summitで台湾・高雄に建設中の40メガワット規模データセンター「Kaohsiung-1」の詳細を公表した。同施設は800VDC(直流高電圧)インフラに対応して設計されており、ギガワット時代の次世代AI工場アーキテクチャを採用する。CoreWeave、Lambda、Nebius、Oracle Cloud Infrastructure、Together AIも800VDCデータセンター設計を進めている。
Schneider Electricの800 VDCサイドカーはGoogle・Metaを含む主要ハイパースケーラーをサポート
Schneider Electricが開発中の800 VDCサイドカーは、NVIDIAの新興標準に準拠するとともに、Google・Metaなどのハイパースケーラーもサポートする設計となっている。さらに「ライブスワップ(活線交換)」機能を搭載し、メンテナンスの大幅な簡略化と修理時間の短縮を目指している。
Schneider Electric、次世代GPUに対応する800 VDCパワーシステムへのコミットメントを表明(2025年10月)
Schneider Electricは2025年10月13日(米国ボストン)、NVIDIAの次世代GPU向けに800 VDCパワーインフラへの対応強化を発表した。高密度ラックアーキテクチャの普及に伴い、800 VDCは次世代データセンターの重要要件として業界全体で採用が進んでいる。同社はシステム全体のアプローチで電力変換・保護・計測を統合したソリューションを提供する。
Schneider Electric CTO(データセンター担当)、800 VDCをコンピューティング密度増大に伴う必然的進化と位置づけ
同社データセンター部門CTOのJim Simonelliは「コンピューティング密度の増大に伴い、800 VDCへの移行は自然な進化」と述べ、顧客が安全かつ確実に移行できるよう支援するとした。同社の強みはグリッドからサーバーまでの電力エコシステム全体を理解し、統合ソリューションを設計する点にあるとしている。
NVIDIA 800 VDCエコシステムにはAnalog Devices・Infineon・STMicroelectronicsなど主要半導体12社が参画
シリコンプロバイダー層では、Analog Devices・Infineon・Innoscience・MPS・Navitas・OnSemi・Renesas・ROHM・STMicroelectronics・Texas Instrumentsが参画する。電力システムコンポーネント層ではDelta・Flex Power・Lead Wealth・LiteOn・Megmeet、データセンター電力システム層ではEaton・Schneider Electric・Vertivが名を連ねる。この3層構造のエコシステム形成がNVIDIAの産業標準化戦略の中核をなす。
NVIDIAのVera Rubin NVL72向けに50社超のMGXパートナーが対応準備中
NVIDIAはOCP Global SummitでVera Rubin NVL72 MGX世代のオープンアーキテクチャラックサーバー仕様を公開した。50社を超えるMGXシステム・コンポーネントパートナーが対応を進めており、NVIDIAはコンピュートトレイとラックのイノベーションをOCPコンソーシアムのオープン標準として提供する方針。
800 VDCアーキテクチャはエンドツーエンド効率を最大5%改善し、TCOを最大30%削減する
NVIDIAの800 VDCアーキテクチャは、エネルギー損失の最小化と必要なPSU数の削減により、エンドツーエンド効率を最大5%向上させる。メンテナンスコストは最大70%削減、冷却コストも低減し、トータルコストオブオーナーシップ(TCO)は最大30%削減が見込まれる。電力変換段数を減らすことで変換ロスを抑制する設計思想が核心にある。
ラック電力が200kWを超えると54 VDC方式は物理限界に達し、銅バスバーの電流容量が破綻する
現行のAIファクトリーでは54 VDCで分配された電力をラックマウント型電源シェルフから大型銅バスバー経由でコンピュートトレイに供給している。ラック電力が200kW超になると、54 VDCのまま電流を増やす設計は銅バスバーの重量・体積・発熱の面で物理的限界に達する(電力=電圧×電流であり、低電圧では電流が極大化する)。この「銅過負荷」問題が800 VDC化の工学的必然性を裏付けている。
FoxconnとNVIDIAが800 VDC電源アーキテクチャを次世代AIファクトリー向けに共同実装
Hon Hai Technology Group(Foxconn)は2025年10月14日、NVIDIAとの協業として800 VDC直流電源アーキテクチャをAIファクトリーに実装すると発表した。同アーキテクチャはComputex 2025で発表され、OCP Global Summit 2025で詳細が公開された。高密度AIワークロード向けに設計されており、モジュール式でスケーラブルな構造を持つ。
シュナイダーエレクトリックとFoxconn(鴻海)が次世代AIデータセンター向け戦略的協業を発表(2026年6月15日)
シュナイダーエレクトリックと鴻海精密工業(Foxconn)は2026年6月15日、次世代AIデータセンターの構築・展開を加速するための戦略的協業を発表した。Foxconnのコンピュートプラットフォーム・AIラック統合・グローバル製造能力と、シュナイダーの電力・冷却・エネルギー管理技術を組み合わせ、統合済みのすぐに展開可能なソリューションを提供する。生産は2026年中に開始予定。
Foxconn会長・劉揚偉氏:「AIインフラの設計・構築・提供モデルの刷新が業界に求められている」
Foxconn会長の劉揚偉(Young Liu)氏は、AIの進化スピードに対応するため既存のインフラ提供モデルの変革が不可欠と述べた。Foxconnのシステム統合力とシュナイダーの電力・エネルギー知見を組み合わせることで、顧客がより速く・スマートに・持続可能な形でAI容量を展開できる道を開くと説明した。