「規格」から「導入計画」へ

NVIDIAが主導する800VDC(800V直流)電力アーキテクチャは、Computex 2025での発表から1年強で、規格の提示から具体的な導入計画のフェーズへ進んだ。ラック電力が200kWを超えると、従来の400V三相ACや48/54V直流では銅バスバーの電流容量が物理的限界に達する。NVIDIAはこの制約に対し、1MW超のITラックを見据えて2027年から800VDCへの業界移行を主導すると明示している。

問題は「いつ、誰が実際に導入するか」だ。電源ベンダーとEMS(電子機器受託製造)大手の一次情報を突き合わせると、導入計画にはすでに具体的な日付と拠点が入っている。

Vertiv — 2026年後半に製品投入、5ヶ月でエンジニアリング完了

VertivはNVIDIAの800VDCロードマップとの整合を2025年5月に発表し、2026年後半に800VDC電源ポートフォリオを投入する計画を示している。ポートフォリオは集中整流器・DCバスウェイ・ラック級DC-DCコンバーター・DCバックアップシステムの4カテゴリで構成される。

注目すべきはスピードだ。Vertivは2025年5月の提携発表からわずか5ヶ月後の同年10月、NVIDIAとの協業で800VDCアーキテクチャの設計成熟度(エンジニアリングレディネス)に到達したと発表した。この製品群は、2027年に展開されるNVIDIA Rubin Ultraプラットフォーム(Kyberラック)の立ち上がりに合わせてタイミングが設計されている。

800VDC導入計画の主要マイルストーン
01

2025年5月

VertivがNVIDIA 800VDCロードマップとの戦略的整合を発表。

02

2025年10月

Vertivが設計成熟度に到達。Schneider Electricも800VDCへのコミットメントを表明。Foxconn×NVIDIAがOCP Global Summitで実装を発表。

03

2026年前半

Foxconn傘下・台湾高雄のK-1 AIデータセンターで800VDCの先行実装が進む。

04

2026年後半

Vertivが800VDC電源ポートフォリオを投入。

05

2027年

NVIDIA Rubin Ultra搭載Kyberラック(576基GPU/ラック)が出荷開始。

Foxconn — 台湾・高雄のK-1データセンターが先行実装拠点

EMS世界最大手のFoxconn(Hon Hai Technology Group)は2025年10月14日、OCP Global Summit 2025でNVIDIAとの協業により800VDCアーキテクチャをAIファクトリーへ実装すると発表した。この協業で最初の実装先に指定されたのが、Foxconn傘下・台湾高雄の「K-1」AIデータセンタープロジェクトである。同サイトはAIサーバー・データセンター・再生可能エネルギー統合能力を実証する拠点と位置づけられている。

Foxconn子会社のIngrasys TechnologyはOCP Global Summit 2025で、NVIDIA GB300 NVL72プラットフォームにIn-row CDU(冷却分配ユニット)を統合したソリューションを展示。GB300 NVL72は1ラックに72基のGPUを搭載し142kWを消費するが、これは800VDC移行前の"最後の過渡世代"の電力密度を示す実例でもある。

さらに2026年6月15日には、Schneider ElectricとFoxconnが次世代AIデータセンター向けの戦略的協業を追加発表した。Foxconnのコンピュートプラットフォーム・AIラック統合・グローバル製造能力と、Schneiderの電力・冷却・エネルギー管理技術を組み合わせ、地域横断で「速度・効率・予測可能性」を訴求する統合済みパッケージを目指すという。Foxconn会長・劉揚偉(Young Liu)氏は「AIインフラの設計・構築・提供モデルの刷新が業界に求められている」と述べている。

Schneider Electric — Google・Metaを含むハイパースケーラー対応

Schneider Electricは2025年10月13日、NVIDIAの次世代GPU向けに800VDCパワーインフラへの対応強化を発表した。開発中の800VDCサイドカーは、Google・Metaを含む主要ハイパースケーラーをサポートする設計で、稼働中の交換作業を可能にする「Live Swap」機能も搭載する。同社データセンター部門CTOのJim Simonelli氏は「コンピューティング密度の増大に伴い、800VDCへの移行は自然な進化」と位置づけている。

サプライチェーンの広がりと導入効果

NVIDIAの800VDCエコシステムには、Analog Devices・Infineon・Innoscience・MPS・Navitas・OnSemi・RenesasROHMSTMicroelectronics・Texas Instrumentsなど半導体大手が参画。ラックサーバーの新世代Vera Rubin NVL72向けには、50社を超えるMGX(NVIDIAのモジュラーGPU参照設計)パートナーが対応を進めている。

導入効果としてNVIDIAが公表する数値は、エンドツーエンド効率の最大5%改善、メンテナンスコストの最大70%削減、TCO(総所有コスト)の最大30%削減。電力変換段数の削減と導体使用量の低減が主な要因だ。

  1. 2025年5月
    Vertiv、NVIDIA 800VDCロードマップとの戦略的整合を発表
  2. 2025年10月
    Vertivが設計成熟度に到達/Schneider Electricが800VDCコミットメント表明/Foxconn×NVIDIAがOCP Global Summitで実装を発表
  3. 2026年前半
    Foxconn傘下・台湾高雄のK-1 AIデータセンターで先行実装が進行
  4. 2026年6月
    Schneider ElectricとFoxconnが次世代AIデータセンター向け戦略協業を追加発表
  5. 2026年後半
    Vertivが800VDC電源ポートフォリオを製品投入
  6. 2027年
    NVIDIA Rubin Ultra搭載Kyberラック(576基GPU/ラック)が出荷開始

調達・電源設計・投資判断の観点では、800VDCはもはや「将来構想」ではなく、Vertiv・Schneider Electricという主要電源ベンダー2社が2026年中に製品を市場投入し、Foxconnが実拠点で先行実装を進める段階にある。2027年のKyberラック出荷開始に向けて、施設側の配電設計・機器調達のリードタイムを今から織り込む必要がある局面だ。

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