欧州委員会は2026年9月24日、産業プロセス熱の脱炭素化プロジェクトを対象とする欧州全域で2回目のオークション「IF26 Heat Auction」の最終的な実施条件(Terms and Conditions)を公表した。計画予算は10億ユーロで、財源はEU排出量取引制度(EU ETS)の収入。入札受付は2026年12月上旬に始まる見込みだ。

対象となる「プロセス熱」は、プラスチックや金属の溶融から化学反応まで、原料を製品に変えるために使う熱を指す。欧州委員会によると、こうした工程は今も主に化石燃料で動いており、産業部門の排出量の4分の3を占める。

第1回からの3つの変更点

対象温度の引き下げ:第1回は100℃超の熱を生む案件だけが対象だったが、今回は80℃超まで広げた。化学、パルプ・製紙、鉄鋼、食品・飲料、セメントなど、全ての産業部門が参加できる。温度要件の引き下げにより、これまで対象外だった比較的低い温度帯の工程熱も応募できるようになった。

対象技術の拡大:対象技術は3区分。①ヒートポンプ、蓄熱、プラズマトーチ、電気ボイラーなどの電化技術、②太陽熱・地熱による直接再生可能熱、そして③今回初めて加わったSMRなどの原子力技術だ。

支援の単位:落札者は、直接CO2排出の削減量1トンあたりに比例する固定プレミアムを最長5年間受け取る。第1回の支援は、検証済みの脱炭素熱の生産量に連動する仕組みだった。支援の基準が「どれだけ熱を作ったか」から「どれだけ排出を減らしたか」へ移ったことになる。

このほか、電力需要のピーク時間帯を避ける柔軟性の確保策や、電力を使わない技術を優遇する仕組みも組み込んだ。加盟国は「Auction-as-a-Service」を通じて、自国の予算で上乗せ拠出することもできる。

第1回の結果:65件・4億ユーロ

第1回のIF25 Heat Auctionも、EU ETSの排出枠オークション収入を財源とする予算上限10億ユーロの枠組みだった。中温熱(3〜5MW)に1.5億ユーロ、中温熱(5MW超)に3.5億ユーロ、高温熱に5億ユーロを割り当てた。

  1. 2025年12月4日
    IF25 応募受付開始

    EU Funding and Tenders portalで第1回オークションの受付を開始。

  2. 2026年2月19日
    IF25 締め切り

    85件の入札を受理。

  3. 2026年5月22日
    IF25 選定発表

    10か国の65件を選定し、4億ユーロの支援を発表。

  4. 2026年9月24日
    IF26 最終条件公表

    予算10億ユーロ。対象を80℃超へ拡大、原子力も対象に。

  5. 2026年12月上旬
    IF26 入札受付開始(予定)

    EEA域内の全規模・全産業の案件が応募可能。

選定された65件は合計766MWの熱容量を持ち、操業開始から5年間で約16.3TWhの脱炭素熱を生産する見通しだ。欧州委員会は、選定案件と実際に助成契約に至る案件は異なる可能性があるとしている。

産業脱炭素化銀行の試金石

欧州委員会は、第1回・第2回のオークションを産業脱炭素化銀行(Industrial Decarbonisation Bank、IDB)のパイロットと位置付けている。IDBは産業の脱炭素化に1,000億ユーロの資金を提供することを目指す構想だ。

EUは、ドイツの炭素差額契約(CCfD)のような加盟国レベルの支援と並行して、EUレベルで競争入札による補助の仕組みを試している。CBAMの下流製品への拡大で域外からの輸入品の炭素コストを引き上げる一方、域内の工場には脱炭素投資の資金を用意する——という組み合わせの一部として読める。

製造業にとっての意味

入札に参加できるのは欧州経済領域(EEA)域内の案件で、企業規模や業種は問わない。域外に本社を置く企業でも、EEA域内に工場を持っていれば対象になりうる。

  • 工場運営側:80〜100℃の工程熱を化石燃料ボイラーで賄っている拠点は、今回から応募対象に入る。12月上旬の受付開始までに、CO2削減量の算定根拠と5年間の運転計画を用意する必要がある
  • 設備メーカー側:ヒートポンプ、電気ボイラー、蓄熱、プラズマトーチは明示的に対象技術とされた。落札案件が決まれば、その設備調達が具体的な需要になる
  • 電力との関係:ピーク時間帯を避ける柔軟性が評価に組み込まれたため、蓄熱や運転時間の調整を含めた設計が有利になる

欧州委員会は10月中に、Innovation Fundの各国窓口を通じて国別の説明会を開くとしている。

参照ファクトカード