国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2026年10月22日、自然関連の開示要求案を公開草案として公表した。コメント期間は120日間で、2027年2月19日に締め切る。生物多様性条約の第17回締約国会議(COP17)の会期中の公表となった。

企業はすでにIFRS S1のもとで、自然に関わるものを含むサステナビリティ関連のリスクと機会について重要な情報を開示する義務を負っている。ただしS1・S2には自然に特化した要求事項がない。今回の草案は、その開示の中身を具体的に定めるものだ。

「基準」ではなく「実務記述書」

最大の特徴は形式にある。ISSBは要求事項を新しい基準としてではなく、IFRSサステナビリティ開示実務記述書第1号(Practice Statement)として提案した。

ISSB副議長のスー・ロイド氏は、多くの企業がS1・S2を初めて適用している最中であり、基準の導入に時間をかける必要と、自然の情報を求める投資家の需要とのバランスをとったと説明している。ISSBは、実務記述書として確定させるか、基準など別の形で出すかについても意見を求めている。

実務記述書は公表日から使用でき、準拠を表明できるのはすべての要求事項に従った場合に限られる。適用初年度は比較情報の開示を免除する経過措置を設ける。

何を開示するのか

草案が求める開示は、S1・S2の構造(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿って、自然に固有の要素を足す形をとる。

公開草案の主な要求事項
01

所在地の考慮

バリューチェーン全体の資産と活動の所在地、その場所の自然の特性を、リスクと機会の特定と開示の両方で考慮する。付属ガイダンスに適用例が4つある。

02

先住民族・地域社会

先住民族、地域社会、影響を受けるステークホルダーとの関わり(エンゲージメントを含む)を考慮し、開示が対象とする人々を明らかにする。

03

シナリオ分析

自然関連のシナリオ分析に基づき、戦略とビジネスモデルのレジリエンスを示す。IFRS S2と同じ軽減措置が使える。

04

リスク資産の割合

自然関連リスクに脆弱な資産・事業活動、機会に整合する資産・事業活動の金額と割合。IFRS S2の気候の指標にそろえた。物理的・移行リスクを分ける必要はない。

05

目標

自ら設定した、または法規制で求められる自然関連の目標ごとに、対象・所在地に関わる側面・法規制との関係を示す。

気候開示との違いは「場所」の扱いだ。水ストレスや森林減少のように、自然関連のリスクは拠点や調達先の立地によって大きく変わる。草案はこの所在地の情報を、特定のプロセスから指標まで一貫して求めている。

TNFDとの関係

ISSBは草案の策定にあたり、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の枠組みを広く取り入れた。TNFDのLEAPアプローチ(2026年公表の第2.0版)はリスクと機会の特定に使えるが、使用は必須ではない。指標については、SASB基準の参照を必須とし、TNFDの開示指標、ESRS(欧州サステナビリティ報告基準)、GRIスタンダードは参照してもよいとした。

ISSBは、TNFDに沿って開示してきた企業は実務記述書に移りやすいとし、両者の対応表を今後公表するとしている。TNFDの枠組みの詳細はTNFDのLEAPアプローチ解説を参照してほしい。

経営企画・サステナビリティ担当にとっての意味

  • 義務化の判断は各国・地域に移る:実務記述書は任意だが、法域が国内基準に取り込み使用を求めれば実質的な義務になる。S1・S2を採用した国・地域が自然の要求をどう扱うかが、次の確認点になる
  • 所在地データの整備が先行投資になる:工場、調達先、原材料の産地を、自然の特性(水ストレス、保護地域との近さなど)と結びつけて把握する必要がある。気候開示に比べ、拠点単位の情報の比重が大きい
  • GRI・ESRSとの併用に配慮:ISSBは、GRIスタンダードやESRSと実務記述書を併せて適用する企業が効率よく対応できるよう配慮したとしている。欧州で改訂ESRSに対応する企業は、同じデータを流用できる範囲を早めに確認するとよい
  • 意見提出の機会:コメント期限は2027年2月19日。実務記述書の形でよいか、基準にすべきかという論点も含まれている

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