西側のEV市場は一様ではない
EVの二極化は「中国とそれ以外」で語られがちだが、西側の内部も一枚岩ではない。米国・英国・EUは、電動化の進み方も、需要を動かす仕組みも違う。中国が量とコストで主導する構図とは別に、西側がどんな構造変化のなかにあるのかを一次情報で整理する。
米国 ― Tesla依存の低下と競争の多様化
米国EV市場の変化を象徴するのが、Teslaのシェア低下だ。Teslaの米国EV市場シェアは2020年の60%から2024年には38%へ下がった。これは市場の縮小ではなく、参入が増え、選択肢が広がった結果と読むべきだ。単独企業が市場の過半を握る段階から、複数社が競う段階へ移ったことを示す。サプライヤーにとっては、供給先が一社集中から分散へ向かう局面にある。
英国 ― 規制が需要を作る
英国は、規制が需要を直接形づくる典型だ。英国の2024年の制度は、新規登録の22%をBEVまたはFCEVにすることをメーカーに求めた。販売目標を制度として課すことで、市場の伸びを政策が下支えする設計である。需要が消費者の選好だけでなく、規制の数値目標に紐づく点が、英国市場を読むうえでの軸になる。
EU ― BEVは伸びるがHEVが最多
EUはBEVが拡大する一方で、移行は多段階だ。EUのBEV市場シェアは2026年4月累計で19.7%へ伸びたが、最も選ばれているパワートレインはHEV(ハイブリッド車)で38.6%を占める。つまりEUは、内燃車から一気にBEVへ移るのではなく、HEVを橋渡しに据えた移行局面にある。BEVの伸びとHEVの厚みは、当面は併存する。
中国との対比 ― 規制で押す西側、補助金で押す中国
西側が規制(ZEV義務)や市場競争で電動化を進めるのに対し、中国は直接的な需要刺激も使う。中国の買い替え補助は、EV購入に対し1台あたりCNY 20,000を支給した。同じ電動化でも、需要を動かす装置が「規制・競争」か「補助金」かで異なる。この違いは、各市場での価格戦略や投資判断の前提になる。
米国:Tesla依存の低下
Teslaの米国シェアは2020年60%→2024年38%。単独主導から複数社競争へ。供給先は分散方向。
英国:規制が需要を作る
2024年制度は新規登録の22%をBEV/FCEVに要求。販売目標を制度化し市場を下支え。
EU:BEV拡大もHEVが最多
BEVは19.7%へ伸びるが、HEVが38.6%で最多。移行はHEVを橋渡しにした多段階。
中国との違い
西側は規制・競争で押す。中国はCNY20,000の買い替え補助など需要刺激も併用。
事業への影響と確認ポイント
西側EV市場を一括りにすると、各国の構造差を取りこぼす。米国は供給先の分散、英国は規制目標の動向、EUはBEVとHEVの構成比——市場ごとに見るべき変数が違う。需要が「競争」「規制」「補助金」のどれで動いているかを見極めることが、価格戦略と投資タイミングの判断につながる。市場全体の二極化は関連記事で扱う。
