インドの半導体国産化は、これまでグジャラート州ドレラの前工程ファブに象徴されてきた。だが調達・設計の視点で足元の動きを見ると、より早く実体を伴って立ち上がりつつあるのは、後工程(組立・テスト=OSAT)と設計の層だ。前工程の大型ファブが量産に至るまでには時間がかかる一方、後工程と設計は既に稼働・実績の段階に入っている。
アッサムに建つインド初の組立・テスト施設
Tataエレクトロニクスは、アッサム州ジャギロードにインド初の国産半導体組立・テスト施設を建設している。投資額は₹2万7,000クローレ(約30億ドル超)、敷地は171エーカーに及ぶ。インド政府の発表によれば、この施設(TSAT)は稼働後に日産最大4,800万チップの生産能力を見込み、直接・間接の雇用は2万7,000人を超える規模になるとされる。
前工程ファブ(建設中・2028量産目標)
後工程OSAT(建設中)
後工程OSAT第1施設(2023年12月稼働)
施設は再生可能エネルギーで全面稼働する計画で、AI・自動車・モバイル・産業向けのグローバル顧客を対象にサービスを提供するとしている。後工程の立地選定が電力調達と顧客地理の両面で設計される点は、近年のOSAT投資に共通する傾向だ。
パッケージング技術は3つの軸で構成
Wire Bond
ワイヤーボンディング。コスト効率に優れた成熟技術で、車載・産業の量産品を幅広くカバーする。
Flip Chip
フリップチップ。高密度・高放熱が求められる用途向け。高性能パワー・ロジックの実装で需要が伸びている。
ISP(Integrated System Packaging)
統合システムパッケージング。複数チップを1パッケージに集約する先端実装。TSVを含む方向で拡張するとしている。
Tataの後工程は構想段階にとどまらない。カルナタカ州ヴェムガルのOSAT第1施設は2023年12月に稼働しており、ジャギロードはその拡張局面にあたる。すでに動いている拠点を持つことは、量産の立ち上げ曲線を読むうえで前工程ファブとは異なる確度を与える。
設計エコシステムも並行して厚みを増す
後工程と並んで、設計層でもインドは実績を積み上げている。インドのDLI(Design Linked Incentive)スキームの下では、戦略分野を対象に24件のチップ設計プロジェクトが進行中だ。
インド政府によれば、これらのプロジェクトは16件のテープアウト、6件のASIC化、特許10件を達成している。設計はチップの付加価値の最大50%、BOMコストの20〜50%を占める領域であり、製造装置を持たずとも価値を取りに行ける入口でもある。製造(後工程)と設計の双方で同時に層を厚くしている点が、インドの今の特徴だ。
調達・設計にとって何を意味するか
前工程ファブ(ドレラ)が2028年の量産開始を目標とする一方で、後工程と設計は既に立ち上がりの実体を伴う。これは供給網を考えるうえで重要な差だ。OSATはこれまで台湾・東南アジア・中国に集中してきたが、そこにインドという選択肢が中期的に加わる可能性がある。
供給網の地理的分散を検討する企業にとって、インドのOSAT立ち上がりは、前工程ファブの進捗とは別の時間軸で追うべきテーマだ。前工程・後工程・設計を一体で内製化しようとするインドの動きは、調達先の地図を中期的に塗り替える要素として整理しておく価値がある。