Microchipは2026年5月26日、炭化ケイ素(SiC)パワーモジュールの新シリーズ「HV-D3 mSiC」を発表した。耐圧3.3kVで、AIデータセンターの固体変圧器(SST)や中電圧の産業用電力変換を主な用途に位置づける。

主な仕様

HV-D3は62mmの「D3」フットプリントに複数のスイッチとダイオードを集積し、ハーフブリッジおよびコモンソース構成で100〜300Aをカバーする。絶縁耐圧は6kVで、CTI 600の筐体材料と拡張した沿面距離により高電圧の直列動作に対応する。基板には窒化ケイ素(Si₃N₄)を採用し、高い熱伝導率とパワーサイクル耐性、緩やかな冷却要件を両立させたとしている。Microchipによれば、700Vから3.3kVまでを共通プラットフォームで展開する。

直列デバイス数を半減

最大の訴求点は高電圧グリッドへの接続効率である。Microchipは、13.8kVや34.5kVの系統接続時に、低耐圧SiCと比べて直列接続するデバイス数を約半分に減らせるとしている。直列段数の削減は、ゲート駆動・電圧バランス回路・実装点数の簡素化に直結し、信頼性とコストの両面で設計者に影響する。同社は産業市場で手薄だった100〜300Aの製品ギャップを埋める位置づけだと説明する。

背景:AIデータセンターの電力制約

発表の背景には、AIデータセンターの電力可用性という制約がある。Microchipは、次世代のAI設計ではトークン生成能力が電力供給に律速されるとし、その緩和策として固体変圧器(SST)の採用が加速すると指摘する。SSTは従来の低周波変圧器に比べて高効率・小型化が見込め、3.3kV級のSiCモジュールはその中核デバイスとなる。同社は2024年2月に3.3kV対応のプラグアンドプレイ型mSiCゲートドライバ「XIFM」を投入しており、今回のモジュールと合わせてSST向けの構成要素を拡充した形だ。

経営・調達・設計への示唆

中電圧帯のSiCモジュールは、これまで低耐圧品の直列接続で対応されてきた領域である。直列段数を半減できれば、電力変換システムの部品点数と制御の複雑さが下がり、調達・保守の負担も軽くなる。一方でテストサンプルや初期量産段階では、実機条件での損失・熱特性や供給体制の確認が調達判断の前提となる。AIデータセンターやグリッド接続用途で中電圧SiCを検討する設計・調達部門にとって、3.3kV級モジュールの選択肢が広がる動きとして注目される。

参照ファクトカード