SiCの主戦場が車載から電力・産業へ広がる
SiCといえばEV、という結びつきはもう一面的だ。2026年7月23日、Navitas SemiconductorはMagnachip Semiconductorとの戦略提携を発表した。NavitasがMagnachipへ高耐圧・超高耐圧SiC技術をライセンス供与し、Magnachipが韓国の自社ファブで内製化する内容だ。両社が狙うのはEVではなく、グリッドインフラ・産業電動化・蓄電システムといった高耐圧の電力用途である。
供与される技術——3300V超まで
ライセンスの対象は、NavitasのGeneSiC Gen4/Gen5プラットフォームだ。カバーする電圧は1200V・2300V・3300V以上で、GeneSiC TAP技術は3300Vを超える超高耐圧まで対応する第4・第5世代の技術として位置づけられる。1200V級が主に車載インバータの領域であるのに対し、2300V・3300V超はグリッド・産業機器・大容量蓄電の領域だ。この電圧帯は、固体変圧器(SST)やSTATCOM/HVDCといった電力インフラ機器で需要が立ち上がりつつある。
Magnachipにとっての要点は、技術を借りて自社ファブへ内製化する点にある。単なる製品調達ではなく、SiCチップの設計・製造能力を韓国内に取り込む。Navitas側は自社のSiCサプライチェーンと材料エコシステムを提供し、Magnachipはそれを自社の工程へ移管・認定していく。
なぜ「高耐圧・非EV」なのか
この提携が示すのは、SiC競争の軸が広がっていることだ。EV向けの1200V級は価格競争が激しく、中国勢の量産攻勢も続く。一方、グリッド・産業向けの高耐圧SiCは、要求される信頼性・電圧が高く、参入障壁も高い。SSTがAIデータセンターの給電に使われ始め、STATCOMやHVDCで系統の安定化需要が増える中で、高耐圧SiCは車載とは別の成長軸になりつつある。
Magnachipが韓国内で高耐圧SiCの内製能力を持つことは、韓国の電力・産業サプライチェーンにとって国産化の一歩でもある。Navitasにとっては、自社技術のライセンス収入と、材料エコシステムの裾野拡大につながる。
この提携が示す論点01
軸は高耐圧・非EV
対象は1200/2300/3300V超。狙いはグリッド・産業・蓄電で、価格競争の激しい車載1200V級とは別領域。
02
内製化がポイント
Magnachipは調達でなく韓国ファブへ移管・内製化。SiC設計・製造能力を国内に取り込む。
03
電力インフラ需要
SST・STATCOM・HVDCなど系統機器で高耐圧SiC需要が立ち上がり、次の成長軸に。
04
協業は拡大余地
両社はSiCライセンス以外の協業領域も検討中で、詳細は後日発表とする。
事業への影響と確認ポイント
高耐圧SiCの調達・設計に関わる立場では、次を確認しておきたい。①採用検討中の系統・産業機器が要求する電圧帯(1200V級か、2300V/3300V超か)と、候補サプライヤーの対応レンジ②高耐圧SiCの供給source——車載向けとは異なり、対応できるメーカーはまだ限られる③ライセンス・内製化型の供給体制が、長期の供給継続性にどう効くか——である。SiCを「EVの部品」とだけ見ると、電力・産業で立ち上がる別の需要を取りこぼす。今回の提携は、その別の需要が具体的なライセンス契約として現れた事例だ。
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