onsemiとSynapticsは2026年10月1日、6月25日に結んだ合併契約を修正したと発表した。修正後、onsemiはSynapticsを1株あたり123ドルの全額現金で取得する。取引総額は約57億ドルで、従来契約の約70億ドルから約13億ドル下がった。

修正のきっかけは、Synapticsが第三者から受けた非要請の競合買収提案だった。onsemiのSEC提出書類では、この提案者は「Party A」とだけ記されている。両社の取締役会は修正契約をいずれも全会一致で承認した。

何が変わったか:株式を含む再編から現金合併へ

対価の組み替えは、手続きの簡素化にもつながった。株式を発行しないため、株式発行に必要な登録手続き(S-4)が不要になる。onsemi取締役会にSynapticsの取締役1名を迎える要件も削除された。

見るポイント
01

1株あたり対価

123ドル(全額現金)。Synaptics株主は株価変動の影響を受けない現金を受け取る。

02

取引総額

約57億ドル。従来契約の約70億ドルから約13億ドル(約19%)低下。

03

資金調達

手元資金+Morgan Stanleyの最大24.5億ドルのシニア担保付タームローン。融資の実行は買収実行の条件ではない。

04

完了見込み

2027年半ば。米FTCは承認済み、他法域の当局が審査中。Synaptics株主総会の承認が必要。

資金は手元資金と、Morgan Stanley Senior Fundingが確約した最大24億5,000万ドルのシニア担保付タームローンで賄う。修正契約では、融資が実行されなくてもonsemiは買収を実行する義務を負う。資金調達のリスクを買い手側が引き受けた形だ。

onsemiの狙い:即時のEPS増益と生産の内製化

onsemiは、修正後の取引が完了時点から非GAAPベースの1株あたり利益(EPS)を押し上げると見込む。Hassane El-Khoury社長兼CEOは、株式を発行しない全額現金の構造により総コストが下がるとし、従来発表していた年間ランレート2億ドルのシナジーに加えて、追加の価値創出機会を特定したと述べた。

追加分は2つある。売上シナジーと、Synaptics製品の生産の一部をonsemiの工場で内製化することだ。どちらも完了後最初の18か月を過ぎてから効果が出る見込みとしている。

Synapticsはエッジ向けAI組込み演算、無線接続、タッチ・ディスプレイ・生体認証などのセンシング製品を手がける。onsemiはSynapticsの事業がAIデータセンター事業の成長を補完し、高収益のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)・センシング事業が安定したキャッシュフローを生むと説明する。onsemiは2026年第2四半期決算の時点で、この買収を「コネクテッドコンピュート」領域への拡張と位置付けていた。

今後の手続き

  1. 2026年6月25日
    当初の合併契約

    onsemi株の発行を伴う再編型の契約を締結。

  2. 2026年8月21日
    Form S-4提出

    onsemiが登録届出書を提出。Party Aの存在が記載される。

  3. 2026年10月1日
    修正契約

    1株123ドルの全額現金、総額約57億ドルへ。S-4は取り下げ予定。

  4. 修正後10日以内
    予備委任状説明書

    Synapticsがonsemiと協議のうえSECへ提出。

  5. 2027年半ば
    完了見込み

    Synaptics株主承認・各国規制当局の承認が前提。

米連邦取引委員会(FTC)はすでに承認しており、残る関門はSynaptics株主総会と、米国以外の規制当局の審査になる。

調達・事業企画にとっての意味

  • Synaptics製品を使う側:onsemiは生産の一部内製化を明言した。完了後18か月以降、製造拠点やパッケージ、認定の変更通知が出る可能性がある。長期採用の品番は、変更管理の連絡窓口を今のうちに確認しておきたい
  • onsemiのパワー半導体を使う側:24.5億ドルの借入が加わる。onsemiは工場の売却・再編を進めてきた経緯があり、買収後の設備投資配分がSiCやGaNの供給計画にどう響くかは、次回以降の決算で確認したい
  • 競合提案の行方:Party Aの名前や条件は開示されていない。Synaptics株主総会までに新たな提案が出れば、条件が再び動く余地は残る

参照ファクトカード