「隠れたボトルネック」に資本が集まる

先端パッケージングの話題はCoWoSやHBMに集まりがちだが、それらを載せるABF系のパッケージ基板(IC基板)は、供給の隠れた要所だ。演算ダイとHBMを1つのパッケージに詰め込むほど、基板には高い配線密度と大判化が求められ、逼迫が起きやすい。そして2026年、この基板に大規模な増産投資が一斉に集まり始めた。

主役は特定国に偏らない。オーストリアのAT&Sと日本のIBIDEN——いずれも基板の主要サプライヤーが、AI需要を裏付けに能力を積み増している。基板が需要に追いつくかどうかは、AIチップ全体の供給継続性を左右する。

AT&S——AI基板で投資を倍増

AT&Sは、AMDおよび別の大手テクノロジー企業とAI向け基板の増産で合意した。供給の裏付けとして、マレーシア・Kulimの第2工場(これまで未使用の棟)をAI基板生産に転用する。既存の建屋を活用することで、立ち上げの時間を圧縮する狙いだ。

数字の動きは大きい。2026/27期の設備投資を€4億から€10〜12億へと大幅に引き上げ、あわせて売上成長率の見通しを30〜35%から45〜55%へ上方修正した。注目すべきは資金の裏付けで、AI基板増産の投資総額€15〜20億は、長期の顧客コミットメントで全額カバーされるという。需要を見込んだ投機的な増設ではなく、顧客の確約に紐づく増産である点が、実需の強さを示す。AT&SはオーストリアのLeoben拠点でIC基板のR&Dおよびコンピテンスセンターを持ち、開発と量産の両輪を回す。

IBIDEN——3年で約5,000億円

日本のIBIDENも大型投資に踏み込む。IBIDENは3年間で約5,000億円のICパッケージ基板設備投資計画を決議した。第1弾としてGama Plant(Cell6)を中心に約2,200億円を投資する。Gama Plant(Cell6)はFY2023に竣工済みで、量産はOno Plantを優先して進めており、既存資産を活かしながら能力を積み増す構えだ。

需要対応は一段構えではない。Ono Plantの追加増強も検討中で、複数の施策を並行して検討している。今回の投資は場当たり的なものではなく、2025年5月に開示済みのFY2030目標を達成する手段として位置づけられる。長期の需要見通しに沿って、能力を計画的に積む姿勢だ。

基板の増産をどう読むか

ABF/IC基板:AT&S と IBIDEN の増産
01

AT&S(オーストリア)

AMD等と合意しKulim第2工場を転用。設備投資を€4億→€10〜12億へ倍増、売上見通し45〜55%へ。€15〜20億は顧客確約で全額カバー。

02

IBIDEN(日本)

3年で約5,000億円を決議。第1弾はGama Cell6中心に約2,200億円。Ono Plant優先で量産、追加増強も検討。FY2030目標の達成手段。

03

共通の構図

AI需要を裏付けに、基板の主要サプライヤーが一斉に能力を積み増す。投機でなく顧客確約・長期目標に紐づく増産。

04

調達への含み

基板は大判化と配線密度で逼迫しやすい要所。増産が需要に追いつくか、顧客確約の有無が供給継続性の判断材料になる。

事業への影響と確認ポイント

調達・投資の観点で押さえるべきは、①自社が関わるAIパッケージのABF/IC基板調達が、逼迫の影響を受けていないか②増産が「顧客確約に紐づくか(AT&S)」「長期目標に沿うか(IBIDEN)」——投機的増設は将来の過剰・価格変動リスクになる③大判化・高密度化の進展で、基板の歩留まりと供給が数年後にどこまで実効化するか——である。基板は目立たないが、AIパッケージの大型化では歩留まりと供給継続性を決める要所であり、増産の実効を追う価値がある。

参照ファクトカード