「隠れたボトルネック」は基板にある

先端パッケージングの話題はCoWoSやHBMに集まりがちだが、それらを載せるパッケージ基板こそ、供給の隠れた要所だ。演算ダイとHBMを1つのパッケージに詰め込むほど、基板には高い配線密度と平坦性、熱・機械的な安定性が求められる。そして今、主流の有機基板(ABF系)が微細化の限界に近づき、次の一手としてガラス基板が現実味を帯びてきた。

この領域を主導するのは、意外にもメモリやファウンドリの中心地とは異なる顔ぶれ——米国のIntelと、韓国のSKC(子会社Absolics)だ。特定国に偏らず、次世代基板の地図を一次情報で見ておきたい。

なぜ有機基板では足りなくなるのか

有機基板は、今十年代末に微細化の限界に達すると予測されている。チップレットを多数、より高密度に集積しようとするほど、基板側の配線密度と平坦性が制約になる。ここでガラス基板は、有機基板と比べて超低平坦性・優れた熱的/機械的安定性を持ち、相互接続密度を大幅に向上させる。

利点は密度だけではない。ガラス基板を採用すると、小型フットプリントへの多チップレット集積が可能になり、コストと消費電力も低減できる。大型化するAIパッケージでは、基板の反りや熱変形が歩留まりと信頼性を直接左右する。ガラスの寸法安定性は、この物理的な壁への回答になる。

Intel——10年研究で先行

Intelはガラス基板を発表し、2030年代に向けた次世代先端パッケージング向けに業界最先端の技術を掲げる。一朝一夕の参入ではない。Intelは10年間の研究を経てガラス基板で業界をリードし、ファウンドリ顧客への提供も視野に入れる。前工程だけでなく、実装と基板まで含めて顧客に提供する垂直統合の一環だ。ガラスは、Intelが描く「実装で性能をスケールさせる」戦略の基盤材料に位置づけられる。

SKC/Absolics——米ジョージアで世界初量産

技術発表の先を行くのが、韓国SKCの子会社Absolicsだ。SKCは米ジョージア州で、ガラス基板の世界初の量産施設を完成させた。研究段階にとどまらず、量産ラインを実際に立ち上げた点が重要だ。SKCのガラス基板は、従来基板比でデータ処理速度を40%向上させると示す。

立地と資本の裏付けもある。生産補助金として7,500万ドルを確保し、米国内でのガラス基板量産を進める。ガラス基板はAIデータセンターの物理フットプリントとエネルギー消費を大幅に削減する——これがAI需要に直結する訴求点だ。米国での量産は、次世代基板の供給を特定地域に依存させないという意味でも注目される。

次世代基板の読み方

ガラス基板:Intel と SKC/Absolics
01

なぜガラスか

有機基板は今十年代末に微細化の限界へ。ガラスは超低平坦性・熱/機械安定性で相互接続密度を高め、多チップレット集積とコスト・電力低減を可能にする。

02

Intel(米)

10年研究でガラス基板をリード、2030年代の次世代実装向け。ファウンドリ顧客への提供も視野に、実装〜基板の垂直統合を狙う。

03

SKC/Absolics(韓・米量産)

米ジョージア州で世界初の量産施設を完成。従来比で速度40%向上、補助金7,500万ドル。研究でなく量産を先行させた。

04

調達への含み

次世代基板は米韓が主導。AIパッケージの大型化で基板が歩留まり・供給の要に。採用時期と量産立ち上げの実績が評価軸。

事業への影響と確認ポイント

調達・投資の観点で押さえるべきは、①自社が関わるAIパッケージが有機基板の密度・平坦性の限界に近づいていないか②ガラス基板の採用時期(2030年代の本格化まで)と、それまでの有機/ABF基板の逼迫をどう乗り切るか③Intel(技術)とSKC/Absolics(量産)のどちらが先に実供給の実績を積み、供給地がどこに分散するか——である。基板は目立たないが、大型化するAIパッケージでは歩留まりと供給継続性を決める要所であり、次世代への移行を早めに追う価値がある。

参照ファクトカード