中国製EVはどこまで広がるか

EVの市場を語るとき、「どのブランドが売れたか」以上に効いてくるのが「その車がどこで作られたか」だ。中国製EVの存在感は、中国国内だけでなく先進国市場でも増している。数字で追うと、その広がりは一過性のブームではなく、生産能力とコストに支えられた構造的なものだと見えてくる。本記事では、IEAの予測と欧州市場の実データから、中国製EVの拡大と電動化の現在地を整理する。

世界の数字 ― IEAが描く中国製EVの軌道

まず全体像から。IEAによれば、2025年時点で先進国で販売されたEVの15%・90万台超が中国製だった。そして2035年には、先進国向けEV販売の4台に1台超が中国製になると予測している。10年で6割増しに近いシェア拡大を見込む計算だ。この予測の土台にあるのが供給網の強さで、IEAは中国のEVサプライチェーンが生産能力・コストの双方で競合を圧倒していると評価している。ブランド単位の勝ち負けではなく、どこで安く大量に作れるかという地力の差が、シェアの軌道を決めている。

欧州市場の実像① ― 電動化そのものの加速

中国製EVの受け皿として大きいのが欧州だ。ただし欧州市場を見るときは、まず電動化そのものが加速している点を押さえる必要がある。欧州のプラグイン車登録台数は、2026年1月に約29.8万台、前年同月比+22%を記録した。BEV(完全電気自動車)の新車シェアは20%へ到達し、3年で2倍に拡大している。プラグインハイブリッド(PHEV)も前年比+33%と伸び、2021年以来もっとも強い1月になった。欧州新車販売の69%が電動化車両(BEV・PHEV・HEV)で、前年の59%から急伸している。市場全体が電動化へ大きく傾いている。

欧州市場の実像② ― 誰が売れているか

その拡大する市場で、実際に売れている車を見ると構図はもう少し複雑だ。2026年1月の欧州EV販売首位はルノー5/Alpine A290(8,165台)で、欧州勢が上位を占めた。中国ブランドではBYD Seal Uが3位に入っている。フォルクスワーゲングループは欧州EV販売のトップ13に7モデルを送り込み、地場メーカーの厚みを見せた。一方でCitroën e-C3がトップ20入りするなど、低価格帯モデルの普及も進む。中国製EVがシェアを伸ばしているのは事実だが、欧州市場は地場ブランドと低価格帯の競争が同時に進む、多層的な戦場になっている。

数字が示す構図 ― 供給網とコストの競争

これらの数字を並べると、EV市場の競争軸が見えてくる。市場は電動化で全体が膨らみ、そこへ生産能力とコストで優位に立つ中国製EVが食い込む。欧州勢は地場ブランドの厚みと低価格帯で応戦する。ブランドの人気だけでなく、その裏にある供給網とコスト構造が、どこまでシェアを取れるかを左右している。パワー半導体やバッテリーといった部材の調達力も、この競争の一部だ。

中国製EVと欧州市場の数字
01

世界シェアの軌道

IEAは2025年に先進国販売EVの15%・90万台超が中国製、2035年には4台に1台超と予測。供給網が土台。

02

供給網の優位

IEAは中国のEVサプライチェーンが生産能力・コスト双方で競合を圧倒と評価。地力の差がシェアを決める。

03

欧州の電動化加速

2026年1月の欧州プラグイン登録は約29.8万台(+22%)。BEVシェアは20%へ到達し3年で2倍。新車の69%が電動化車両。

04

多層的な競争

1月首位はルノー5/Alpine A290、BYD Seal Uが3位。VWはトップ13に7モデル。低価格帯のCitroën e-C3も台頭。

事業への影響と確認ポイント

中国製EVの拡大を読むときは、ブランドの売れ筋よりも構造を見たほうが実態に近い。確認したいのは、対象市場で電動化そのものがどれだけ加速しているか、中国製EVが価格と供給能力でどの層に食い込んでいるか、地場ブランドや低価格帯モデルがどう応戦しているか、そしてその競争を支える部材(バッテリー・パワー半導体)の調達力がどちらに傾いているか——である。EV市場の勝敗は、車そのものの前に、どこで安く大量に作れるかで決まりはじめている。

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