中国の新エネルギー車(NEV)市場は、2025年に二つの構造転換を同時に経験した。国内の価格競争が沈静化に向かう一方で、輸出が倍増したのである。これは「国内の消耗戦」という従来のイメージから、輸出主導の成長段階への重心移動を示している。

CAAM(中国汽車工業協会)によれば、2025年のNEV販売は1,649万台で前年比28.2%増だった。CPCA(乗用車市場信息聯席会)ベースの小売は約1,281万台、前年比17.6%増である。国内市場は成熟しつつも二桁成長を維持している。

輸出の倍増という新局面

最も大きな変化は輸出にある。2025年の中国のNEV輸出は262万台と前年比で倍増した。中国ブランドに限ったNEV輸出は204万台で前年比139%増、ブランド輸出全体に占めるNEV比率は49.5%に達している。完成車輸出の半分近くがNEVになったことを意味する。

Loading chart

牽引役はBYDである。2025年に約460万台のNEVを販売し、うちBEVは約226万台。BEVの年間販売で初めてTeslaを上回り、世界最大のBEV販売企業となった。国内ブランド全体の小売シェアは65%で、前年から4.8ポイント上昇している。

価格競争は「沈静化」へ

「中国EVの果てしない値下げ競争」という見方も、2025年のデータは修正を促す。1〜7月に値引きされたモデル数は106で、2024年同期の147から減少した。同期間の平均値引き額は約2.1万元である。値引きモデル数の減少は、各社が消耗戦から収益性重視へ舵を切りつつある兆候と読める。

価格競争の沈静化は、輸出余力の確保とも整合する。国内で過当競争に体力を削られるより、関税障壁のある欧州を含む海外市場で付加価値を取りに行く——という戦略の転換が背景にある。

EUの確定相殺関税と「回避」の構図

輸出拡大に対し、EUは通商面で対抗している。EUは2024年10月30日付で、中国製BEVに対する確定相殺関税を発動した。これは既存の10%の輸入関税に上乗せされるもので、主要企業別の税率は次のとおりである。

EUの確定相殺関税(2024年10月30日発効・5年間)
01

個別税率

BYD 17.0%、Geely 18.8%、SAIC 35.3%。調査に協力したが抽出されなかった生産者は加重平均20.8%。いずれも10%の基本関税に上乗せされる。

02

非協力企業

調査に協力しなかった生産者は37.6%。最も高い税率が課され、EU市場での価格競争力は大きく制約される。

03

回避行動

中国メーカーは欧州での現地生産や、欧米OEMへの技術ライセンス・合弁を通じて関税を回避しようとしている。結果として完全なデカップリングではなく、相互依存が深まる方向にある。

ここで見えるのは、関税が中国NEVの欧州流入を一方的に止めるのではなく、生産立地とサプライチェーンの再配置を促しているという構図だ。現地生産化や電池の技術ライセンスが進むほど、西側ブランドと中国技術の相互依存は強まる。米国側の規制と合わせて見ると、市場は規制圏と成長圏に分断されつつも、技術・部材のレイヤーでは絡み合ったままである。

米国の規制側の動きは米コネクテッド車規制:SC再編の論点で、世界全体の二極化は世界EV販売2026:二極化する市場で扱う。

参照ファクトカード

> 出典:中国政府公式(gov.cn・CAAM公表の2025年1〜10月の生産/販売/輸出)、CAAM(2025年通年NEV販売1,649万台)、CPCA(小売1,281万台)、欧州委員会 Implementing Regulation (EU) 2024/2754(確定相殺関税率)。FactCardは一次・公式(gov.cn/欧州委員会)に統一。本文の通年値はCAAM公表値。