電動車・コネクテッドカーをめぐる地政学リスクで、しばしば不正確に語られるのが米国の規制である。「2025〜2026年に中国製を完全排除」といった要約は、実際の規則の構造とずれている。正確には、モデルイヤー(MY)を基準とした段階発効であり、対象も限定されている。

米商務省産業安全保障局(BIS)のコネクテッドカー最終規則は、2025年1月16日に官報(Federal Register)へ掲載され、2025年3月17日に発効した。規則は中国・ロシアに結びつく主体が設計・開発・製造・供給する特定の技術を、コネクテッドカーから排除することを狙う。

段階発効のロードマップ

最終規則は、対象範囲を時間をかけて広げる段階的アプローチを採る。要点は次のとおりだ。

コネクテッドカー規則の段階発効
01

ソフトウェア:モデルイヤー2027

車両接続システム(VCS)と自動運転システム(ADS)に関わるソフトウェアの禁止が、まずMY2027から適用される。中露の主体が設計・開発・供給するソフトが対象。

02

ハードウェア:モデルイヤー2030

ハードウェアの禁止はMY2030以降に適用される(モデルイヤーを持たないユニットは2029年1月1日基準)。この時点で規則はソフトとハードの双方をカバーする。

03

PRC/ロシア系メーカー:MY2027

中露に十分な結びつき(nexus)を持つメーカーによるコネクテッドカーの販売は、たとえ米国内で製造されたものであってもMY2027から禁止される。

ここで重要なのは、規制の対象がVCSとADS——すなわち車両の通信機能と自動運転機能に関わる領域に限定されている点だ。車載のあらゆる中国製部品が即座に排除されるわけではない。また「発効日(2025年3月)」と「禁止の適用開始(MY2027〜2030)」は別の概念であり、両者を混同すると影響時期を誤って見積もる。

サプライチェーンへの実務的影響

この規則がサプライヤー・OEMに突きつけるのは、「いつから何が禁止されるか」を自社のサプライチェーンに即してマッピングする作業である。

第一に、自社製品のどの部品・ソフトウェアがVCS/ADSに該当するかの棚卸し。第二に、その供給元が中露nexusに当たるかの確認。第三に、影響を受けるモデルがどのモデルイヤーに当たるかの特定。これらを掛け合わせて初めて、対応の優先順位とリードタイムが見える。

MY2027のソフトウェア要件は、設計凍結のリードタイムを考えると実質的にすでに準備期間に入っている。通信モジュールや自動運転スタックの調達先を、規制圏向けと成長圏向けで二系統化する動き——いわゆるDual-Track——が現実的な選択肢になる。

「分断」と「相互依存」が同居する

米国の規制は、欧州の対中相殺関税と合わせて、市場を規制圏(米欧日)と成長圏(グローバルサウス)に分断する方向に働く。一方で、西側ブランドの中核部材や電池が中国製ないし中国技術ライセンスに依存している現実は、完全なデカップリングを難しくしている。

つまり市場は政治の論理で分断されつつも、技術・部材のレイヤーでは相互依存が残る。この二重性を前提に、仕向け地の地政学リスクに応じて通信・自動運転ソフト・電池をプラグインで差し替えられる柔軟な製造・調達体制を組めるかが、中期の競争力を左右する。

中国側の輸出と関税回避の動きは中国NEV:価格競争の沈静と輸出急増で扱っている。

参照ファクトカード

> 出典:Federal Register, "Securing the ICTS Supply Chain: Connected Vehicles"(2025年1月16日掲載)、BIS(2025年3月17日発効)。ソフトMY2027/ハードMY2030の段階発効は同最終規則に基づく。