Volkswagen Group of Americaは2026年10月1日、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)に、電気自動車ID.4のリコールを届け出た(NHTSAリコール番号26V630)。対象は2023〜2026年モデルの22,524台で、生産期間は2023年1月1日から2025年2月1日まで。
異例なのは、根本原因が分からないまま届け出た点だ。届出によると、対象車の一部の高電圧電池では、特定の充電パターンと80%を超える充電率(SOC)が重なると、電池内で熱伝播(thermal propagation)が起こり、車両火災に至るおそれがある。届出には部品メーカーとしてSK Battery America(米ジョージア州コマース)が記載されている。
届出の要点
対象
2023〜2026年モデルのID.4、22,524台(2023年1月〜2025年2月生産)。欠陥推定率は0.1%。
リスク
特定の充電パターン+SOC 80%超で電池内の熱伝播、火災のおそれ。根本原因は不明。
電池
部品メーカーはSK Battery America。高電圧電池の部品番号3種が対象。
暫定措置
80%を超えて充電しないよう警告ステッカーを配布。接続状況に応じてソフトウェアで最大80%に制限。
最終的な修理方法は開発中だ。販売店への通知は10月6日、所有者への暫定通知は11月27日までに行う。対象車は新車保証期間内のため、費用の払い戻し制度は設けない。
どう見つかったか:充電データが手がかりに
- 2024年1月〜2026年8月米国で22件のクレーム
2024年1月18日から2026年8月7日までに確認。
- 2026年6月17日現地調査を指示
電池の熱事象の分析で、特定の絶縁抵抗値とDC充電比率の影響が示唆され、過去のリコール対象外の電池を調べる現地調査を開始。
- 2026年9月21日製品安全委員会で検討
SOC 80%超との関係を確認。セルサプライヤーに生産対策と対策済み生産開始日の説明を求める。
- 2026年9月23日自主リコールを決定
根本原因は未特定のまま、安全上の影響を踏まえて米国でのリコールを決める。
- 2026年10月1日NHTSAへ届出
リコール番号26V630。
セルの生産ロットだけでなく、車両ごとの実際の充電履歴でリコール範囲を決めている。コネクテッド車両のデータが、リコールの対象を狭める根拠として使われた形だ。調査の過程ではDC急速充電の比率が要因の候補に挙がっている。
ID.4は3月にも電池セルでリコール
Volkswagenは2026年3月17日付のリコール(コード93EW)でも、2023〜2024年モデルのID.4(米国670台、カナダ136台)を対象に、高電圧電池セルの電極ずれによる火災リスクに対応していた。このときの対策は該当モジュールの交換だった。今回の26V630は、過去の電池リコールに含まれていなかった電池を対象にした別のリコールだ。
OEM・電池調達にとっての意味
- 充電データが安全評価の一部になった:リコール範囲の決定に車両の充電データが使われた。OEMと電池メーカーの間で、セルの生産記録と車両側の使用データをどこまで共有し、誰が分析するかは、供給契約の論点になる
- 80%制限のコスト:最終対策が出るまで、所有者は電池容量の上位約2割を使えない。フリート用途では運用計画への影響が大きい
- 現地生産セルのトレーサビリティ:電池の供給元は米ジョージア州の工場だ。北米ではGMとLG Energy SolutionのUltium Cellsなど現地セル工場の稼働が続く。根本原因は未特定だが、今回は2023年1月〜2025年2月生産の車両に積まれたセルの生産記録が範囲決定に使われた。セル単位の記録を車両と結び付けて残せるかが、リコールの規模を左右する
