インドのCG Power and Industrial Solutionsの完全子会社Axiro Semiconductorは2026年10月29日、米シリコンバレーのSiC(炭化ケイ素)パワーデバイス開発企業ThinSiCへの戦略投資を発表した。ThinSiCの最新の資金調達ラウンドでリード投資家を務め、同社技術の開発と商用化を支える長期の商業提携も結んだ。CG Powerは同日、このプレスリリースをボンベイ証券取引所(BSE)とインド国立証券取引所(NSE)に開示した。投資額と調達総額は公表していない。
RF設計会社が出資でパワー半導体に入る
Axiroはベンガルールに本社を置き、RF・ミリ波・高速接続のIC設計を中核とする。自社サイトでは、10年以上で4億個のデバイスを出荷し、10kHz〜40GHzの製品群を持つと説明している。パワー半導体の製品はまだない。今回の投資について同社は、製品群をパワーエレクトロニクスへ広げる戦略の一環だとした。自社でSiCの製造を立ち上げるのではなく、技術を持つ新興企業への出資と提携で参入する形だ。
投資の形
ThinSiCの最新ラウンドでリード投資家。長期の商業提携も締結。投資額は非開示。
狙う用途
鉄道の牽引装置、産業用ドライブ、送配電インフラ。EVは挙げていない。
販売チャネル
親会社CG Powerのインド送配電・産業インフラでの事業基盤を使い、インド内外へ展開。
ThinSiCの技術
横方向エピ成長で欠陥を減らし、薄いエピ層を剥がしてSiC基板を最大10回再利用(同社説明)。
AxiroのNaveen Yanduru CEOは、SiCは次世代パワーエレクトロニクスの中心になるとしたうえで、普及を阻んできた最大の壁はコストだと述べた。ThinSiCの技術は、高耐圧SiCを抑えてきたコストと量産性の課題に対応するものだと説明している。
ThinSiCは「基板の使い回し」でコストを下げる
ThinSiCは米カリフォルニア州サンタクララに本社を置く。同社サイトによると、横方向エピタキシャル成長(ELO)で結晶欠陥を減らし、形成した極薄のエピ層を基板から分離する。これによりSiC基板を最大10回再利用でき、材料コストと設備投資を下げられるという。欠陥は基板からエピ層で80%超減ったとし、関連特許として米国特許2件(12,125,697号、11,848,197号)を挙げる。
同社は、既存のSiCデバイスはシリコンの3〜5倍高価でウェハ製造がコストの大半を占めると整理し、シリコン並みのコストと、送電網の電力変換に使える高耐圧デバイスを目標に掲げる。いずれも同社の説明で、第三者による検証結果や、量産時期・耐圧・電流定格などの製品仕様は公表されていない。
調達・設計担当にとっての意味
- インドの半導体は後工程から設計・パワーへ広がる:CG Powerはルネサスなどとの合弁CG Semiでサナンドの後工程(OSAT)工場を稼働させている。今回は子会社Axiroを通じてSiCデバイスに入る。インドではRIR Power ElectronicsもSiCの垂直統合を進めている
- 高耐圧の産業用途がSiCの次の需要先になりうる:Axiroが挙げた鉄道・産業用ドライブ・送配電は、EVより高い耐圧を求める領域だ。この分野でSiCを検討する設計担当は、コストの前提がどこまで下がるかを追う価値がある
- まだ技術と出資の段階:投資額、製品の定格、量産時期、製造拠点はいずれも未公表だ。調達の選択肢として数えるのは、デバイスのサンプル提供や量産計画が示されてからになる
- 基板の供給構造にも影響しうる:基板の再利用が実用化すれば、1枚の基板から作れるデバイスの数が増え、大手デバイスメーカーが結んでいる基板の長期供給契約のような調達の考え方も変わる可能性がある
