「SiCは減速」ではなく「SiCは二桁成長」

EV減速でSiCに逆風、という見立てが業界に広がっている。だが2026年7月23日に発表されたSTマイクロエレクトロニクスのQ2決算は、当のトップサプライヤーが異なる絵を描いていることを示した。SiC売上は2026年通期で前年比二桁成長を見込む——支えは6インチから8インチウェハへの移行と、AIデータセンター向けの需要だ。全体のQ2売上は前年比26%増の34.9億ドル、粗利率34.8%、純利益1.87億ドルだった。

Q2の数字——回復局面の入り口

Q2の売上高34.9億ドルは前年同期比26%の増加で、自動車向けセグメントが増収を牽引した。粗利率は34.8%、営業利益は1.87億ドル。半導体サイクルの底を過ぎ、回復局面の入り口にあることを示す内容だ。

先行きも強気だ。Q3の売上ガイダンスは37.0億ドル(前四半期比+6.2%)・粗利率37.0%、Q4は40億ドル超を見込む。STは、これが通常の季節性(H2で+15%程度)を上回る成長だと説明している。流通在庫が標準の目標水準を下回っており、複数の製品カテゴリーで供給がタイト化する兆しがあることも、需要の底堅さを裏づける。

SiC——8インチ移行が二桁成長の土台

注目すべきはSiCの見通しだ。EVの販売鈍化がSiC需要を冷やすという懸念に対し、STはSiC売上が2026年に前年比で二桁成長すると明言した。その根拠として挙げるのが、6インチから8インチ(200mm)ウェハへの技術移行である。8インチ化は1枚のウェハから取れるチップ数を増やし、チップあたりのコストを下げる。歩留まりが安定すれば、EV一辺倒でなくても採算の取れる価格帯に入る。

この見立ては、SiCへの資本が欧州・中国で積み増されている構図とも整合する。需要の谷で仕込まれた8インチ産能が、回復局面のコスト競争力を決める。STの二桁成長見通しは、その競争の入り口に立つ企業の自己認識でもある。

AIデータセンター——新しい成長の柱

もう一つの柱がAIデータセンターだ。STはデータセンター向け売上の目標を上方修正し、2026年に10億ドル超、2027年には20億ドル超を見込むとした。パワー半導体メーカーにとって、データセンターは「EVに次ぐ」用途ではなく、EVと並ぶ主戦場になりつつある。800V直流給電やSiC/GaNを使った高効率電源の需要が、この数字を押し上げている。

STマイクロQ2が示す構図
01

回復局面入り

Q2売上+26%・34.9億ドル。Q3は37.0億ドル、Q4は40億ドル超見通しで季節性を上回る。

02

SiCは二桁成長

EV減速下でもSiC売上は2026年二桁成長見込み。支えは6→8インチ移行によるコスト低下。

03

DCが第二の柱

データセンター向け売上目標を2026年10億ドル超・2027年20億ドル超へ上方修正。

04

供給タイト化の兆し

流通在庫が目標水準を下回り、複数カテゴリーで供給逼迫の初期兆候。

事業への影響と確認ポイント

STの決算は、SiCサプライヤー選定における前提の再確認を促す。確認すべきは、①採用検討中のSiCサプライヤーが8インチ移行のどの段階にあるか——移行の遅速がコスト競争力に直結する②EV向けとデータセンター向けの需要ミックス——用途分散が進むサプライヤーほどEV減速の影響を吸収できる③供給タイト化の兆しが本格化する前に、必要な数量の確保計画を持っているか——である。「SiCはEVとともに減速する」という単純な図式は、少なくともトップサプライヤーの自己認識とは食い違い始めている。

参照ファクトカード