Wolfspeedは2026年10月7日、米国防総省(Department of War、DoW)の戦略資本局(Office of Strategic Capital、OSC)から、最大15億ドルの長期融資に関する条件付きコミットメントレターを受け取ったと発表した。SiC材料とワイドバンドギャップ(WBG)パワーデバイスの国内開発・生産を支え、米国の国家安全保障用途にも重点を置く。
満期は30年を想定する。ただし、これは最終契約の前段階の「条件付き確約」で、実行には多くの条件が付く。Wolfspeed自身も、最終契約の締結や融資の実行は保証されていないと明記している。
融資の構造:初回は借り換え、残りで事業計画
金額と満期
最大15億ドル・満期30年。初回6億ドル+残り9億ドル(最大3トランシェ)。
金利
同年限の米国債利回り+リスクプレミアム(暫定1.25〜1.75%)。当初5年は利息の元本組入れが可能、その後25年で定額償却。
ワラント
完全希薄化後株式の最大7.5%分をDoWに発行。各トランシェの実行に応じて比例発行。
主な条件
適格資金7.5億ドル以上の拠出、転換社債の株式化努力、オフテイク契約、議会の承認・予算措置。
初回分は設備投資ではなく、既存の社債の借り換えに使われる。Wolfspeedは2025年9月にChapter 11の再建手続きを終えたが、その後も資本構成の改善が課題として残っていた。グレゴール・ファン・イスム最高財務責任者(CFO)は今回の確約を、資本構成の最適化と財務基盤の改善に向けた節目と位置付けている。
何に使うか:SiCに加えてGaNと耐放射線化
Wolfspeedは、融資を次の複数年計画に使うとしている。
- 国内のSiC材料とパワーデバイス事業の強化(SiCウェハ・パワーデバイスの国内生産拡大)
- 低耐圧・高耐圧GaNパワーデバイスの国内生産の確立・拡大、または国内回帰
- GaN-on-SiC高周波エピウェハ技術の高度化(次世代通信インフラや電子戦システム向け)
- 現行SiC製品と将来のGaN製品の耐放射線化(radiation-hardening)
生産拠点はノースカロライナ州、ニューヨーク州、アーカンソー州にある。SiCを主力としてきたWolfspeedが、GaNパワーデバイスの生産を事業計画に明記した点は新しい。
実行までの条件
- 2026年10月7日条件付きコミットメントレター
OSCが最大15億ドルの融資を条件付きで確約。Wolfspeedが8-Kで条件を開示。
- 最終契約前デューデリジェンスと契約交渉
OSCによる事業・財務・法務・技術などの審査。予算書の提出、引取契約の意向表明書などが前提。
- 融資発効前株式で5,000万ドルを調達
初回トランシェ分の自己資金拠出1.5億ドルのうち5,000万ドルは、発効前に第三者への株式発行で調達する必要がある。
- 発効後36か月引出し可能期間
各トランシェの実行時に担保価値比率(LTV)などの財務制限条項の遵守が必要。第2トランシェ以降は追加の審査とオフテイク契約も条件。
条件は重い。2026年6月28日以降に得た第三者からの株式発行代金などの適格資金を合計7億5,000万ドル以上拠出すること、転換社債の元本の相当部分を株式化するよう商業上合理的な努力をすること、OSCが受け入れる販売先との引取(オフテイク)契約を結ぶこと、そして議会による承認・予算措置と行政管理予算局(OMB)の同意が必要になる。
調達・事業企画にとっての意味
- 「確約」と「実行」を分けて見る:今回は条件付きの段階で、資金はまだ確定していない。SiCの調達先評価では、最終契約の締結と初回トランシェの実行を確認するまで、財務面の評価を大きく変えないほうがよい
- 株式の希薄化:7.5%分のワラントと、転換社債の株式化、7.5億ドルの株式などの調達が重なる。既存株主の持ち分は薄まる方向にある
- オフテイク条件の意味:融資の条件に販売先との引取契約が入っている。防衛用途を含む長期契約が増えれば、民生向けの供給枠の配分にも影響しうる。代替サプライヤーとの比較を続けておく価値はある