ブラジル財務省の炭素市場特別局(SEMC)は2026年10月29日、省令(Portaria)第3199号を公布した。ブラジル排出量取引制度(SBCE)の下で、温室効果ガスの測定・報告・検証(MRV)義務を段階的に導入する公式スケジュールを定めたもの。根拠法は2024年の法律第15.042号で、制度は2030年にかけて段階的に動き出す。

対象は年1万tCO2e以上、3段階で組み入れ

MRV義務がかかるのは、年間排出量が1万tCO2e以上の事業者で、財務省によると国内の法人登録(CNPJ)の1%未満にあたる。2030年以降は、2万5000tCO2e超を排出する企業が国家割当計画(PNA)の義務を負う。

  1. 2027年
    第1段階

    アルミニウム、一貫製鉄所、セメント、石油・天然ガスの探鉱・生産、化学の一部、鉄鉱石・ボーキサイト採掘、紙・パルプ、ガラス

  2. 2029年まで
    第2段階

    セラミック、半一貫製鉄所、第1段階以外の化学、食品・飲料、その他の鉱物採掘、石油精製、電力

  3. 2030年〜
    国家割当計画(PNA)

    排出総量の上限と排出枠(CBE)の割当。開始時は100%無償割当

  4. 2031年まで
    第3段階

    道路・鉄道・水上輸送

各段階は4年の準備サイクルをとる。1年目に監視計画を作り、2〜3年目に排出を監視し、4年目にPNAのためのデータを取りまとめる。財務省は、今回の省令は報告書の即時提出を求めず、初期段階では排出上限も費用も課さないと明記した。

7月の原案から線引きが変わった

省令は2026年7月28日から8月28日まで意見募集にかけられ、938件の意見が寄せられた。原案と最終版を比べると、第1段階の範囲が変わっている。

原案と最終版で段階が変わった業種
石油精製と航空は第1段階から外れ、ガラスと鉄鉱石・ボーキサイト採掘が第1段階に入った
業種7月の原案10月の最終版
石油精製第1段階第2段階
航空輸送第1段階3段階の一覧に含まれず
ガラス第2段階第1段階
鉄鉱石・ボーキサイト採掘第2段階(鉱業)第1段階
化学第2段階一部を第1段階に
廃棄物・下水処理第2段階3段階の一覧に含まれず

財務省の7月28日と10月29日の発表を比較して作成

次は検証機関の認定ルール

SEMCは政令と一連の省令でブラジルMRVプログラム(PB-MRV)を整え、MRVの一般指針、測定方法論、第三者検証機関(OVV)の認定ルールを定める。政令案の意見募集は2026年11月の予定で、年内の公布を目指す。オフセット制度(PBCE)の政令案も11月に意見募集を行い、2027年に最初の方法論を認定する計画だ。2026年中に第1段階のセクターと規制問題会議(CAREG)を立ち上げる。

経営企画・調達担当にとっての意味

  • ブラジル産素材の排出データが規制の裏付けを持つ:第1段階には鉄鋼、アルミ、紙・パルプ、セメントなど素材産業が並ぶ。対象企業は2027年から監視計画を作るため、これらをブラジルから調達する企業は、Scope 3の一次データを求めやすくなる
  • CBAMとの関係を見ておく:EU CBAMは、輸出国で支払った炭素価格を差し引ける仕組みを持つ。ブラジルの割当は2030年開始・当初無償のため、当面は差し引ける炭素価格は生じない。CBAMの検証要件と合わせ、排出データの測定方法をそろえておくと二重対応を減らせる
  • 新興国のETSが法令段階に入っている:トルコは8月27日にETS規則を官報で公布・施行した。ブラジルも割当より報告義務を先に始める。現地拠点を持つ企業は、排出データの整備を割当開始より前に進めておく必要がある
  • 未確定の部分:測定方法論と検証機関の認定ルールは11月以降の政令案で決まる。排出枠の総量や業種別の配分も、2030年のPNAまで示されない

参照ファクトカード