トルコ環境・都市化・気候変動省は2026年8月27日付官報(第33353号)で「トルコ排出量取引制度規則(Türkiye Emisyon Ticaret Sistemi Yönetmeliği)」を公布し、即日施行した。同規則は温室効果ガスの監視・報告・検証(MRV)手続きと、ETSの運用に関する詳細を定める。

法的根拠は2025年7月2日制定の気候法(İklim Kanunu)第7552号および大統領令第4号第792/D条だ。気候法の制定から実施規則の公布まで約13か月を要したことになる。制度の主管は気候変動局(İklim Değişikliği Başkanlığı)が担う。

市場設計:オークション中心の一次市場

規則第4条の定義条項は「一次市場(Birincil piyasa)」を、排出枠(tahsisat)を市場参加者にオークション方式で配分するための取引が行われる市場と定義している。無償割当ではなくオークションを一次市場の定義に据えた点から、EU ETSと同様のオークション中心モデルを志向していることがうかがえる。

排出量把握の粒度:「下位施設」単位

実務上、最も負荷がかかりうるのが排出量の帰属方法だ。規則は「下位施設(Alt tesis)」という単位を定義している。これは施設内の活動から生じるGHG排出量を、特定の製品・製造プロセス・計量可能な熱利用または燃料利用に分解し、質量エネルギーバランスによって境界を定めた技術単位を指す。

施設全体の排出量を一括して報告するのではなく、製品やプロセスごとに切り分ける必要がある。この粒度で排出量を把握できる体制は、CBAMのように製品単位の内包排出量を求められる制度への対応と直結する。逆に言えば、この粒度の管理体制がなければ国内ETSにもCBAMにも対応できない。

検証機関はTÜRKAK認定が必須

規則第4条の定義では「認定(Akreditasyon)」を、検証活動を行う検証機関をトルコ認定機関(Türk Akreditasyon Kurumu: TÜRKAK)が国内外で認められた技術基準に従って評価・承認し、定期的に監査することと規定している。検証機関はこの認定なしにMRV業務を行えない。

トルコETS規則の主要規定
01

施行日と根拠

2026年8月27日付官報第33353号で公布・即日施行。気候法第7552号(2025年7月2日制定)が根拠法。

02

一次市場

排出枠をオークション方式で配分する市場と定義。EU ETS型のオークション中心モデルを示唆。

03

排出量の粒度

「下位施設」単位で製品・プロセス・熱利用・燃料利用別に排出量を帰属。EU ETS第4フェーズの手法論と整合。

04

検証体制

検証機関はTÜRKAKによる認定が必須。認定なしにMRV業務を行えない。

05

適用除外

研究開発・試験用施設、バイオマス専用施設、軍事関連施設(国防省・参謀本部・各軍・憲兵司令部・沿岸警備隊・国防大学等)。

適用除外の範囲は規則第2条第2項に明示されている。新製品・プロセスの開発またはテストを行うR&D施設、専らバイオマスのみを使用する施設・施設区画、そして軍事関連施設が対象外となる。

CBAM対応国としての位置づけ

トルコはEU向けの鉄鋼・アルミニウム等の主要輸出国のひとつで、CBAMの影響を直接受ける立場にある。CBAMは輸出国側ですでに支払われた炭素価格を控除する仕組みを持つため、国内に機能する炭素価格制度があるかどうかが、輸出企業の実質負担を左右する。

ここで効いてくるのが検証体制と排出量データの粒度だ。CBAMで控除を受けるには排出量データが適切に検証・報告されている必要があり、制度があるだけでは足りない。トルコの規則がTÜRKAK認定を検証機関の必須要件とし、下位施設単位での排出量帰属を求めているのは、この要求水準を意識した設計と読める。

調達側の視点では、トルコに限らず「サプライヤー所在国に控除対象となりうる炭素価格制度があるか、その制度の検証体制はEU側の要求に耐えるか」という問いが、コスト予測の前提として立ち上がってくる。制度の有無だけでなく、MRVの粒度と検証機関の認定枠組みまで見る必要がある。

参照ファクトカード