欧州委員会(税制・関税同盟総局)は2026年9月30日、CBAM(炭素国境調整メカニズム)の年間50トンの免除閾値について初めての評価結果を公表した。2025年4月1日〜2026年3月31日の輸入実績で、50トン以下の輸入として免除される排出量は対象全体の0.87%にとどまり、規則が定める1%の上限を下回った。閾値は据え置かれる。
その2日前の9月28日には、域外工場の排出量を検証する検証機関向けのガイダンスと、検証機関がCBAM Registryにアクセスするための手順も公表している。閾値の評価は「誰が義務を負うか」、検証ガイダンスは「義務をどう果たすか」に関わる。2つを合わせて読むと、本格制度の初年度に何が求められるかが見えてくる。
50トン閾値の評価:免除は0.87%
50トン閾値は、CBAM対象品のEU向け輸入量が年間50トン以下の輸入者を申告義務から外す仕組みだ。8月に公表された実務ガイドでも、50トン超の輸入者に認定CBAM申告者の資格取得が義務付けられることが確認されている。
今回の評価で、閾値の改定は当面ない。小口輸入を免除しても、対象排出量の99%超は引き続き制度の対象に残る計算になる。
検証ガイダンス:域外工場は物理的な現地訪問が原則
検証ガイダンスは、2026年1月1日以降にEUへ輸入されるCBAM対象品を生産する域外工場の排出報告を検証する機関を主な対象にしている。輸出側の工場が実排出量のデータを使う場合、その数値は認定された検証機関の検証を受けている必要がある。
現地訪問
検証機関は工場の境界、生産工程、排出源の網羅性、計測機器の運用を確認するため、物理的な現地訪問を行う。
バーチャル訪問の条件
直前の報告期間に物理的な訪問を実施済みであることなど、すべての条件を満たす場合に限られる。
訪問の免除
直前2報告期間に物理的な訪問を実施していることが前提。
検証機関の認定
EU加盟国の国家認定機関(NAB)の認定が必要。域外の検証機関もEU内の任意のNABで認定を受けられ、全加盟国で相互承認される。
バーチャル訪問や訪問の免除には、過去の物理的な訪問の実績が条件になる。本格制度の初年度にあたる2026年の排出量については、多くの工場で物理的な現地訪問が必要になると読める。
検証機関は9月1日からCBAM Registryへのアクセスを取得できるようになった。欧州委員会は登録手順、技術ユーザーアクセスの申請ガイド、検証機関・施設運営者向けポータルの利用マニュアル、研修動画3本も公表している。
申告期限から逆算したスケジュール
ガイダンスによると、認定CBAM申告者は年次CBAM申告を毎年9月30日までにCBAM Registryで提出する。報告期間は暦年のため、検証は翌年1月より前には完了できない。
- 2026年中検証機関の選定・事前作業
リスク分析や現地訪問は報告期間中から実施できる。ガイダンスは期中の着手を推奨。
- 2027年1月以降検証の完了
12月31日までの全データがそろってから最終手順に入る。
- 2027年8月中旬検証報告の引き渡し(目安)
申告の取りまとめと証書購入の時間を見込み、遅くともこの時期までに輸入者へ渡すことが望ましい。
- 2027年9月30日2026年分の年次CBAM申告期限
認定CBAM申告者がCBAM Registryで提出。
前駆体を原料に使う複合品の工場は、前駆体を作る工場の検証報告を先に受け取る必要がある。ガイダンスは、期限までに前駆体の検証報告が届かない場合は、欧州委員会が公表するデフォルト値に置き換えて検証を進めるよう示している。
輸出側の工場にとっての意味
- 検証機関の確保を急ぐ:現地訪問が前提である以上、検証機関の人員と日程が制約になる。2026年分の検証を2027年初めに一斉に頼むと、訪問枠が埋まる可能性がある
- デフォルト値への置き換え:検証が間に合わなければ、自社の実排出量ではなく欧州委員会のデフォルト値で計算される。省エネや電化で排出を減らしてきた工場ほど、その成果が証書の枚数に反映されなくなる
- 小口輸出は閾値の確認を:輸入者の年間輸入量が50トン以下なら申告義務はない。ただし閾値は輸入者単位で判定されるため、自社の出荷量だけでなく取引先の総輸入量を確認したい
