一般4本+セクター別6本、実例つきの実務ガイド

欧州委員会は2026年8月14日、CBAM(炭素国境調整メカニズム)の本格実施期における準拠支援を目的としたガイダンス文書10本のシリーズを公表した。構成は一般ガイダンス4本(No.1:CBAM概念入門、No.2:非EU事業者向けクイックガイド、No.3:内包排出量の計算、No.4:EU ETS無償割当調整の計算)と、セクター別ガイダンス6本(No.5a〜5f:セメント・水素・肥料・鉄鋼・アルミニウム・電力)。セクター別ガイドには生産プロセス・バリューチェーン・モニタリング報告上の考慮事項に加え、実際の計算例が添付されている。主な対象読者はEU域外の対象施設オペレーター、認定CBAM申告者、検証機関だ。

CBAMはEU規則2023/956(2023年5月10日制定)に基づき、まず2023年10月から報告義務のみの移行期間に入り、2026年1月1日から証書の購入・提出が義務化される本格施行フェーズへ移行した。義務は段階的に強化される設計で、2026年は内包排出量の2.5%分の証書取得のみでよいが、毎年ステップアップし2034年には100%カバレッジが求められる。ガイダンスNo.4が解説するのはこの証書提出数をEU ETSの無償割当分だけ調整する仕組みで、EU ETS参加者が無償割当を受けている場合、その分だけCBAM証書の提出義務が減少する。

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このカーブは無償ETS割当が段階的に縮小する裏返しであり、2026〜2028年は各種CBAM実務解説サイトで広く一致した数値が確認できる一方、2030年以降の数値(48.5%への急伸を含む)は政治的な調整対象になってきた経緯があり、確定値としてではなく現行想定として扱うのが実務上安全だ。2029年から2030年にかけて22.5%→48.5%と伸びが急になる設計自体は、無償割当の段階的縮小スケジュールに基づく。

対象は約180の追加製品カテゴリーへ拡大提案中

現行CBAMは鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料・水素・電力という一次素材が対象だが、EUはこれらを原料とする機械・自動車部品・白物家電・建設電気設備など約180の製品カテゴリーへの拡大を提案している。実現すれば一次金属生産者だけでなく、完成品・半製品メーカーも規制対象に入る。輸出国側ですでに炭素価格が課されている場合はその金額が控除され、EU相当価格との差額のみが追加負担となる仕組みは維持される。

南アフリカの輸出企業が直面する実務課題

法律事務所Werksmansの解説によると、南アフリカは中国・インド・ブラジルとともにCBAMを開発途上国に不公平な負担を課すWTO協定違反だと公式に批判している。しかしCBAMはEU法として自動的・一方的に適用される規則であり、国家の同意や条約締結を必要としない。政治的な異議申し立てがあっても、輸出業者のコンプライアンス義務は停止されない。

南アフリカ輸出企業の実務論点
01

対象拡大リスク

現行の一次素材(鉄鋼・アルミ等)に加え、約180の完成品・半製品カテゴリーへの拡大提案が進行中。下流製造業者も規制対象に入る可能性がある。

02

国内炭素税による相殺

CBAMは輸出国側で支払済みの炭素価格を控除する仕組みを持ち、南アフリカでは国内炭素税がこの控除対象となり得る。ただし控除を受けるには排出量データの検証・報告体制が前提条件となる。

03

データ品質の重要性

炭素税を支払っていても排出量データの検証・報告が不十分だと、EU側での控除が認められず二重課税に近い状態になり得る。

Werksmansの解説によると、南アフリカの国内炭素税はCBAM負担の相殺手段として機能し得るが、実際に控除を受けるには排出量データが適切に検証・報告されていることが必要条件となる。データ品質が不十分な場合、炭素税を支払っていてもEU側での控除が認められない可能性があり、これは南アフリカに限らず新興国の輸出企業全般に共通するリスクだ。

参照ファクトカード