査読論文がHinaの量産セルを分解した

ナトリウムイオン電池の評価が、論調から実測へと移った。査読誌Cell Reports Physical Science(2026年6月・オープンアクセス)が、Hina Battery(中科海納)の最も商用化が進んだナトリウムイオン電池を分解解析(ポストモーテム)と電気化学試験にかけ、その結果を公表した。結論は、性能と製造品質の両面で最先端のリチウムイオン電池に匹敵するというものだ。「安いが品質は見劣りする」という従来の見方を、独立した学術データが塗り替えた。

「Li-ion同等」の中身 ― ばらつき5.3%という製造品質

注目すべきは製造品質の数値だ。論文によれば、120セルにわたるインピーダンスのばらつきはわずか5.3%にとどまり、量産ラインの均一性が高いことを示す。電気化学性能でも、4C(25℃)で容量は100%超を維持し、−20℃でも使用可能な放電エネルギーは80%超(充電方向では56%)を確保した。構造面ではタブレス・ダブルアルミ構造と、新規カソード組成NaCu1/9Ni2/9Fe1/3Mn1/3O2を採用し、粒子内で銅を他の遷移金属から空間的に分離する設計が同定された。

現在地は110Wh/kg ― 密度の壁と使いどころ

一方で限界も明確だ。同論文が分析した市販の1.2Ah 18650セルは、エネルギー密度110Wh/kg(33.2×140mm・270g・AC内部抵抗≤3mΩ)。重量・体積あたりのエネルギーではリチウムイオンに及ばず、長い航続を要するEVでは不利が残る。低コストと低温特性、そして今回示された量産品質を活かせる領域から普及が進む。Hina自身、用途を電動自転車・低速EV・通信基地局・データセンター・家庭用・系統用蓄電の6領域と位置づけ、2026年3月には広西桂林で配電網向けナトリウムイオン蓄電システムの系統連系を完了している。

調達・設計への示唆

調達側にとっては、リチウム価格の変動に左右されない第二の選択肢が、品質面でも実用候補に入ってきた。設計側では、密度の低さをパック構造やセル形状で吸収する設計余地が論点になる。単発のニュースではなく、中国勢のナトリウムイオンが「量産品質の壁」を越えつつある兆候として捉えるのが妥当だ。

Hinaナトリウムイオンセルを評価する3つの軸
01

製造品質

120セルのインピーダンスばらつき5.3%。査読論文が最先端Li-ion同等の製造品質と評価。

02

エネルギー密度

市販18650で110Wh/kg。Li-ionより低く、定置・低温・廉価用途から採用が進む。

03

実装段階

Hinaは用途6領域を設定。2026年3月に系統用Na-ion蓄電を系統連系済み。

参照ファクトカード