英国政府は、UK CBAM(英国版炭素国境調整メカニズム)における適格炭素価格制度(Qualifying Carbon Pricing Scheme: QCPS)のリストを公表した。2026年施行規則「CBAMレート計算および炭素価格救済決定規則」を根拠とし、2026年6月19日時点の内容として整理されている。管轄はHMRC(英国歳入関税庁)で、Open Government Licence v3.0のもとで公開されている。

UK CBAMの仕組み自体は、対象を「高度に貿易される炭素集約型CBAM商品」とし、輸入業者が英国製造業者と同等の炭素価格を負担するという設計だ。その負担を軽減しうるのが、輸出国側で既に支払った炭素価格の救済(carbon price relief)であり、その適用可否がこのリストに紐づく。

認定された16制度

リストに挙げられているのは以下の制度だ。

UK CBAM適格炭素価格制度(2026年6月19日時点)
01

アジア

日本 GX-ETS / インド Carbon Credit Trading Scheme (CCTS) / 中国 National Emissions Trading System / 韓国 K-ETS / シンガポール炭素税 / 台湾 Carbon Fee / カザフスタン KAZ ETS

02

欧州

EU排出量取引制度(EU ETS) / スイス CHETS / モンテネグロ排出量取引制度 / セルビア炭素税

03

米州・大洋州・アフリカ

カナダ連邦 Output-Based Pricing System (OBPS) / チリ炭素税 / オーストラリア Safeguard Mechanism / ニュージーランド NZ ETS / 南アフリカ炭素税

日本のGX-ETSが含まれている点は、英国向けに炭素集約型製品を輸出する日本企業にとって直接の関心事になる。当サイトでもGX-ETSの排出量算定・報告実務を扱ってきたが、国内制度への対応がそのまま英国向けの炭素コストにも効いてくる構図が生まれた。

インドのCCTSが含まれている点も、インドのCBAM対応という文脈で意味を持つ。EU向けではFTAの附属書で対応が図られつつあり、英国向けでは制度承認という形で道筋がついたことになる。

制度があっても救済されない部分がある

リストに載っていることと、実際に救済を受けられることは同じではない。無償割当によってカバーされる排出量は救済の対象外とされている。全排出が無償割当でカバーされている場合や、制度が全額の免除・還付を与えている場合が例として挙げられており、その場合は実効炭素価格がゼロに近づく。

実効炭素価格の計算方法についてはGOV.UKに別途ガイダンスがある。いずれの場合も、適格性の判断・救済の請求・記録保持の責任は納税義務者(liable persons)側にあると明記されている。制度が認定されているという事実だけでは足りず、自社の排出のうちどれだけが実際に炭素価格を負担しているかを示せる必要がある。

リストは「時点」であり「非網羅的」

もう一つ注意すべきは、このリストの性格だ。2026年6月19日時点のものであり、未確定・開発中の制度は含まれない非網羅的なリストとされている。

さらに、2026年6月19日以降にリスト掲載制度へ変更が加わり基準を完全に満たさなくなった場合、その制度は適格炭素価格制度ではなくなる。英国政府は、基準を完全に満たす制度については今後もリストへ追加していく方針を示しており、世界各地の炭素価格制度の整備を支援する役割も担うとしている。

つまりこのリストは固定されたものではなく、各国の制度変更に応じて動く。トルコのようにETS規則を新たに公布した国が今後追加される可能性もあれば、逆に既存制度が基準を外れる可能性もある。

調達・輸出計画への示唆

英国向けに炭素集約型製品を輸出する立場からは、確認すべき点が3つある。

第一に、自社またはサプライヤー所在国の制度がリストに載っているか。第二に、載っていたとして、自社の排出のうち無償割当でカバーされる割合はどれだけか——ここが厚いほど救済幅は縮む。第三に、救済を請求するための記録をどう整えるか。責任は輸入側の納税義務者にあるが、証明に必要なデータを供給するのは製造側になる。

EU CBAMと英国CBAMは別制度であり、適格と認められる制度の範囲も運用も一致するとは限らない。両市場に輸出する企業は、それぞれの要件を分けて把握する必要がある。

参照ファクトカード